10月16日(土)
今回の海外日系人大会で百周年記念祭典協会は、記念行事や決意を明らかにするのはいいが、記念事業に関しては具体的に打ち出すべきではない――。あと三年半に迫った百周年に向けて、日本側にアピールできる絶好の機会である今大会。三時間にわたって議論が行われ、記念事業に関して総意のない現状をかんがみ、慎重論が続出した。
本来なら事業プランの具体像などを日本側に説明し、資金や人材、技術に関する具体的な支援を要請しはじめるタイミングと言えそうな今大会。コロニアには説明されてもいない「日伯総合センター案」を日本の関係者に先走って紹介した昨年同様、今年も大きな進展は望めない雲行きのようだ。
十四日、午後一時から北海道交流協会会議室で行われた、ブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)とブラジル日本文化協会(上原幸啓会長)共催による「海外日系人大会へ向けての意見」交換会で、冒頭のように決議され、祭典協会に文書で申し入れることになった。
世界中の日系人代表が年に一回、東京に集まって要望陳情を日本政府に行うと同時に、幅広い討論を行う海外日系人大会。今年は二十七~二十九日に「日系人社会と母国日本の連携強化を求めて」をテーマにし(1)在外選挙(2)日本語教育・人材育成と経済・技術協力事業(3)情報ネットワーク(4)日系就労者について話し合うことになっている。
工業移住者協会の小山昭朗さんは「百周年の渡部和夫さんたちが大変苦労されているのは分かるが、いろいろな意見を聞かずに記念事業が作られた経緯がある。現状では白紙に戻る可能性がある。地方の日系社会幹部でも批判的な意見を持っている人が多いのに、それを日系人大会に持っていくのは非常に危険なことでは」と慎重な態度を求めた。
救済会役員の大浦文雄さんも「今のように四つもある記念事業を大会に出しても、うっかりすると逆効果になる可能性がある。めいめいが勝手に資金集めなどに進んでいっていいのか。それでは成功するものも成功しない。もっと議論して一~二つに絞ったほうがいい。今回は記念行事だけのアピールにして、記念事業は出さない方が良いのでは」と提案した。
同様に「あっちこっちからお願いにいったら、コロニアがまとまっていないという印象を日本側に与えてしまう。それだと逆効果となり、むしろ行かない方がいいぐらいだ」という意見も出た。
中沢県連会長は「小泉首相来伯と今回の海外日系人大会、百周年記念事業を日本側に伝える絶好のチャンスが二回もあったのに、それに向かってコロニアの議論をまとめられなかった点は十分に反省すべき。時間はどんどん過ぎる。そろそろ、何らかの責任をとるべき時期では」と祭典協会執行部へ厳しい注文をつけた。
秋田県人会役員の進藤次夫さんは「大会の議事録やら決議は延々と毎年作っているが、何の実行もされないことが多すぎる。その辺のところをしっかりと問いただすべき」と大会のあり方自身を批判した。
最後に決議が行われ、出席した約二十人全員が賛成挙手し、冒頭の申し入れをすることになった。出席予定だった吉岡黎明百周年祭典協会役員は結局、現れなかった。
その他、(1)在外選挙については、中沢県連会長が「投票方法を簡便化し、比例区以外への投票を可能にする点」などを発表する(2)は日本語教育センターの谷広海理事長が「国際交流基金も日系社会の日本語教育への支援をしてほしい」との意見書を作成する(3)文協などの事例を発表する(4)四世以降にも定住ビザを発行してもらうように要請する――などを確認した。
ブラジルからは文協と百周年祭典協会を代表して吉岡文協副会長、援協からは菊地義治副会長、県連からは中沢宏一会長や高橋一水副会長や大西博己広島県人会長、サンタクルース病院の横田パウロ理事長、国外就労者情報援護センターの二宮正人理事長ら多数が参加する予定。