10月2日(土)
子供たちの眼を通してみた世界――。サンパウロ市のSESCポンペイアで十七日まで開かれている写真展「ペロス・オリョス・インファンティス」では、そんなキラキラしたプリントの数々に出あう。出品している「作家」は日本、東ティモール、ウズベキスタン、オーストラリア、そしてブラジル五カ国の子供たち。扱いなれないカメラを持って町や野に出、いままで気付かなかった友達や家族の、身近な風景の、一瞬を捕らえた視線がなんとも瑞々しい。「子供たちは写すことで何かを発見している。大人もそれを見て発見してもらいたい」と語る、今展を企画した写真家永武ひかるさん(横浜市在住)に聞いた。
子供たちに簡易カメラを渡し、身の回りの好きなものを自由に撮影してもらう。そんなプロジェクトを始めて四年になる。東ティモールを訪ねたのがきっかけだ。
「紛争直後の時期でしたが、子供たちの目が輝いていたのが印象的だった。そこで彼らの視線で、新しい国の誕生を記録してみたらどうかと思い立った。実際出来上がった写真は素晴らしく、写真の原点のように活き活きしていた」
その後ウズベキスタン、オーストラリアのアボリジニー族の居住区、台湾の離島、モザンビークを訪ね歩き、地元の子供たちに写真を撮ってもらった。日本は東京・銀座の泰明小学校の生徒たちに依頼。ブラジルではパラー州トメアスー移住地や、アマゾンの原住民部落、セアラ―州の漁村、リオのファヴェラにまで出向いた。
今展の会場は、旧工場をリフォームした採光の良い空間。日本、ブラジルの子供たちの作品を中心に約二百八十点が並ぶ。海外での本格的な展覧は初めてという。リオ市、ブラジリア市にも巡回する。パラー州のトメアスー移住地、セアラ州の漁村では展示を行なわず、子供向けのワークショップを予定する。
同世代の「まなざし」を共有してもらったうえで、日本の文化を紹介したいと永武さん。「異文化理解が深まる機会になれば。また、住んでいる場所は違っても、そう違わない人生を送っているんだと気付いてもらえればいい」。泰明小学校の児童からは、ブラジルの子供たちに向けたメッセージも預かってきた。
大学ではポルトガル語学科を専攻。卒業後東京でブラジル銀行に務めた。写真家となってからは、撮影取材でブラジル、ペルーに毎年のように通った。最近は「本業より、このプロジェクトで忙しい」と笑顔をみせる。将来は成果をまとめた出版物も刊行したいと意欲的だ。
「次は、戦争やテロで揺れるアメリカの田舎の子供たちに依頼したいと思っている。これまでアジア、アフリカ、南米ときたから。写真を撮影してもらってそれを各地で展覧するだけでなく、将来は子供たち自身の輪を繋ぐ手助けも」
午前十時~午後八時(火~土)、日曜・祭日は午後五時まで。クレーリア街93.電話11・3871・7700(SESCポンペイア)。
リオ市はムゼウ・ダ・レプーブリカで二十日から二十七日まで。ブラジリアは十一月十六日から二十八日、連邦文化センターで。トメアスー移住地は十一月前半に訪問予定。