9月15日(水)
【ヴェージャ誌】世銀は百四十五カ国のビジネス事情調査を行い、ブラジルはお役所の手続きが最ものろい国のひとつという結果が出た。ブラジルの後に続くのはハイチ、ラオス、コンゴ、モザサンビークなど超後進国というお粗末な話。
ブラジル国内十都市で営業許可証の取得手続きを行うと、応対が最悪なのは産業の中心でけん引役のサンパウロ市。市関係が百二十日、州と連邦関係が三十二日で、なんと合計百五十二日も開業手続きにかかる。続いてリオが九十一日。十都市中一番早いのが、サルバドールで三十四日。手続きが複雑で非能率的なのは、ビジネスにとって泥んこ道を歩かされるようなもの。
証明書の手数料は法外に高く、労働法は前時代的感覚で、裁判所は超ノロノロ審理。ブラジルで事業を起こすには、重い足かせをはめられる覚悟が必要。
ブラジルがチリの爪の垢を煎じて飲むなら、GDP(国内総生産)を二・二%引き上げられる。手続きを簡略化するだけでGDPは、百億ドル上がる。こうした効率化が、産業に与えるインパクトは大きい。
従業員一人を解雇するのに、百六十五週分のサラリーを退職金として払う。航空機や自動車を輸出し先進国と覇を競う国が、ルアンダやブータン、マダガスカル並みの労働法を後生大事に守っている。
パロッシ財務相は六月、ブラジル最大手のトレヴィサン・コンサルタントに小零細企業の育成策を打診した。回答はズバリ、手続きの簡素化、税法と労働法の改正、開業手続きは一カ所でできるように、管轄官庁を集めるなどであった。
会社が一人の社員を月給一千レアルで採用するため、会社は給料と負担金を含めて二千三十レアルを払う。大中企業は払えるが、小零細企業は違法雇用の道を選ぶ。ブラジル全土で労働者の六〇%、五千万人が違法雇用で就労している。この数字は年々増加している。
違法雇用による国内総生産がGDPの四〇%を占めると、トレヴィサンはいう。アングラ市場で営業する企業は融資が閉ざされ、資本主義の全ての恩典から除外されている。それはハンド・ブレーキを掛けたまま走行するようなもの。
ブラジルのビジネスを難しくしているものに、裁判所がある。判決はのろく、審理は判断基準が条文ではなく社会慣習にある。ブラジル裁判所の審理が、複雑怪奇なのは伝統的な因習があるからだ。司法官らは手続きの簡素化よりも、司法制度の抜本改革を恐れている。