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農牧輪換の共同研究=下田さん「大豆」と「牛」南マ州拠点に

9月11日(土)

 資源収奪農業からの脱却――。下田勝久さん(42)は、茨城県つくば市にある独立行政法人・国際農林水産業研究センターの主任研究官。今年一月から、EMBRAPA(ブラジル農牧研究公社)との共同研究のため来伯している。
 南マット・グロッソ州カンポ・グランデ市の全国肉牛研究センターを拠点に、「農牧輪換を利用した大豆の持続的な生産技術の開発」の研究をすすめている。
 「やっていることは簡単ですよ。大豆畑の代わりに草地にして大豆の収量を回復させるんです」。難解な言葉を使わない下田さんの説明は素人にも分かりやすい。
 大豆の連作は、連作障害など様々な問題が起こる上に収量が落ちてしまう。大豆農耕地の代わりに牧草地を作って大豆の収量を回復させようという試み。また、粗放牧畜を続けてきた土地の地力増進にもつながる。「要は三圃制。ヨーロッパでは地力対策として昔から行なわれていたことで、発想としては新しくないんですよ」。
 ブラジル農牧業が現在抱えている資源収奪型で、環境破壊的な農法の問題点の解決策になると期待できる。
 牧草地にはどんな草をどのくらいの期間作れば効果が高いのか、肉牛を飼って大豆単作に近い収益を得るにはどうすればいいか、などを研究中だ。
 ドウラードス辺りの農地では広がってきており、科学的にも証明されている方法なのだが、結果がなかなか出てこないのが問題点。
 目に見えて効果が出るにはある程度の期間が必要だが、短期間で効果を出そうとするから難しい。
 ブラジル人の〃大らかな〃気質も研究の足を引っ張る一因のようだ。「ブラジル人はアバウトでね、データをしっかり取ってくれないんですよ」と下田さん。農牧輪換システムを導入している農家は、効果があると気付いてはいるが、「何が?」と聞かれても黙り込んでしまう。〃なんとなく〃効果があるという程度にしか認識していないのだ。
 また、これまで耕作ばかりを続けてきた農家が牧畜を始めるのは、慣れない上に最初は出費がかさんでたいへん。最近は大豆の値が良いこともあって大豆単作に戻ってしまう。
 様々な問題点もあるが、「複合経営により経営が安定するのは確か」と下田さんは太鼓判を押す。