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「酒・ライトでほろ苦い赤土のカシャッサ」

グルメクラブ

9月10日(金)

 オーガニックのものがどれもいい、ともてはやされている。化学添加物フリー、環境と身体に優しい―はいずれも時代のキーワードだ。
 そんなブームに沸く昨今にあり、カシャッサにも百%オーガニックを売り文句にした商品が登場している。ワインやウオッカにはかねてから有機物がちらほらみられたが、時代の波はブラジルの地酒に過ぎないカシャッサにまで押し寄せてきたのだ。
 世界の蒸留酒でいま最も消費量の多いのが韓国焼酎ソジュで、次いでウオッカとカシャッサが拮抗している。といっても消費の伸び行きで比べればカシャッサに分がある。オーガニック商品の開発競争が始まったのも、その勢いを駆ってのことだといえる。
 過日、日本であったブラジル・ビジネス商談会に参加したアウテンチカ飲料産業・貿易は、有機カシャッサをいち早く日本市場に紹介したカンパニーのひとつだろう。米国や、パナマ、ウルグアイ、ドイツへの輸出が売り上げの九五%を占めるが、将来的に日本と近隣アジア諸国で商品を流通させてくれるパートナーとの出会いを期待して、くだんの商談会に名を連ねたそうだ。有機栽培サトウキビが原料の「工芸的」なカシャッサが自慢。その発酵にはトウモロコシから作った天然酵母を用いるなど細部まで気を配る。
 オーガニックの商品イメージにはただ健康的というだけでなく、時代の空気をがっちりつかむ、ポップで斬新な気分を感じる。最近の見本市で見つけたテラ・ヴェルメリャ=写真=がそうだった。サトウキビの葉をデジタル・プリントしているスマートな容器デザインからして、カシャッサ界の旧弊を打ち破る挑戦だ。ボトルの形姿も生命感に満ちた流線型。なるほど、オーガニックは外見もだ。一本芯が通っている。
 製造工場はパラナ州アサイ市にあり、月産十五万リットル。熟成にはジュキチーバ・ロザの樽を使用している。小売価格帯は九十レアルから百レアルとおいそれと手を出せない値段だが、創始日本人入植地だった歴史の刻まれた土地で、こんな先端商品が生産されているなんて。
 開墾に辛苦を重ねた移民の血と汗がほんのり染みた「赤土のカシャッサ」と、日本の消費者には覚えてもらえれば幸いだ。ポップな現代感覚と移民史の曲折が混在した、ライトでほろ苦いカシャッサだ。

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