聞き間違いでなければ、ある移民船の模型を指差し、「自分の父は三等室でやって来た」と言っていた。サンパウロ市長選に出馬しているマルフ氏だ。
五日、文協移民史料館を見学した際のこと。日本移民の歩みを刻む展示を目の前に、早逝した父親の姿を重ね透かすような発言をいくつか耳にした。冒頭のはそのひとつだ。
フォーリャ紙は先の「父の日」、各候補に父親の思い出を語らせていたが、とりわけ同氏の談話に、移住後働き尽くめで命を縮めたという哀惜の念が濃くにじんでいた気がする。
過日に、同じく文協を訪問したセラ候補はイタリア系二世。生活慎ましい、熱心なカトリック信者の父親に手を引かれ、ミサに出かけた幼少時代を振り返る同氏の話も美談だった。
醜聞飛び交う選挙戦、アクの強い話が前面に展開される中、きらり光る淡いセンチメント。心情票なら、移民家庭で長じた候補に投じたくなる。 (大)
04/09/07