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ルーラ大統領=農業法廷設置を提言=土地係争の処理急げ=頻発する農地占拠を憂慮=MSTはイナゴより悪質

9月3日(金)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】ルーラ大統領は一日、内陸部の土地係争を専門に扱う農業法廷の設置を高等裁判所のヴィジガル長官に提言した。農地占拠運動(MST)の先鋭化と組織化に伴い、土地係争が新しい社会問題となっていることを大統領は憂慮した。司法機関の地方小都市への分散化により、不正資金の違法送金にようやく監視の目が届き始めたことは評価するが、悪化する土地問題の解決にも一層の努力を要請した。
 大統領は最近になって頻発し出した農地占拠運動が、農業生産に影響し、社会問題となっていることを憂慮している。地方裁判所の地方小都市への分散化により、手薄な地域を狙った犯罪に、当局の監視を通じてようやく司法のメスが入り始めたが、土地係争の司法介入には至っていない。
 連邦法制審議会は、農業法廷の設置立案について動き出した。年末までに原案をまとめ、議会へ上程する予定。同案では僻地へ支所ではなく連邦裁判所直轄の新裁判所を設け、土地係争と不正資金の動きも監視する。
 農地改革院の目標達成が困難視され、同院から大統領府へ危険信号が発信されていた。年末までに十一万五千世帯入植の公約は資金不足のため履行不可能とされ、MSTが報復に占拠を頻発、社会問題化させたと同院はみる。
 ルーラ政権以降のMSTの占拠件数は、記録破りで常軌を逸脱している。〇三年の農場占拠は一年間で二百二十件であったが、〇四年は上半期だけで二百五十件となった。開拓時代の土地所有権は横紙破りが横行し、今度は占拠が横行する時代となった。
 南大河州北西部のコケイロス・ド・スールでは一日、ゲーラ農場四千ヘクタールがMSTに占拠された。同農場にとっては、今年に入り三度目の占拠となる。四十五キロメートル離れたサランジ市で編成した三百五十世帯の一個連隊を引き連れ、同農場を目指しMSTは行軍した。地主は同州軍警部隊の出動を要請し、占拠阻止のため待機した。MSTは三組に別れ、陽動作戦を採った。
 パラナ州マノエル・リバス郡のトレイス・マリア農場を占拠していたMSTは、十六カ月後の九月一日に撤退した。その間、農場施設に放火や破壊行為の狼藉を行った。北パラナ州地主連盟(UDR)のプロシェト会長は、同農場の地主とともに現場検証に立ち会った。MSTは撤退の際、農機具や農産物を大量に略奪した。略奪できないものは破壊した。イナゴの襲来よりも悪質だと、地主は糾弾した。
 同農場は〇三年五月に占拠された。地主は直ちに裁判所へ訴え、三日後に農地回復の仮処分を取得した。しかし、強制立ち退き処分が決行されたのは、八月二十七日だった。しかもMSTは州政府差し向けのトラックで意気揚々と引き揚げた。MSTは地味肥沃で設備が整備された同農場を農地改革の戦略用とみなし、今後の運動拠点とするため執拗に占拠を試みた。
 MSTの中に潜伏している知能犯グループの存在が、UDNやMST執行部から指摘されている。MST執行部の命令系統とは異なる指令が、MSTの中から出るのは問題だ。MSTの資金源や戦略立案についても、不明瞭な部分が多い。