8月20日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】長い間低迷していた繊維業界がようやくトンネルの出口にさしかかった。不景気になると人間の生活の三大原則である衣食住のうち、真っ先に節約の対象になるのが衣料品だが、ブラジルでは一九九〇年代から不景気が繊維業界を直撃した。しかし経済は回復基調に乗り、これまで輸出に頼ってきた業界に内需の伸びが加わった。さらに近年にない寒波で、衣服類の販売が急増したことも追い風となった。製造業者は在庫が底をつくなど嬉しい悲鳴を上げた。これに伴い新規採用も大量化している。
ブラジル繊維協会によると、業界全体の本年の売り上げは二百五十億ドルと予測され、これにより五万人の新規雇用が見込まれるという。本年上半期ではすでに三万七千八百四十八人が雇用されており、これは昨年同期比四九二%に相当する。昨年同期の雇用は六千三百九十五人に留まり、二〇〇二年同期比マイナス六三%と不振だった。
本年一月から七月まで輸出は十億五千二百万ドルとなり、昨年同期比で三五%増だった。このうち既製服は、衣料品が二四・四%、ビーチウェア八〇%、婦人用下着類が五七%それぞれ増加した。上半期の実績は一億六千六十万ドルで昨年の一億二千九百十万ドルの二四・四%増となった。部門別ではジーンズウェアが三千三百万ドル(昨年二千九百六十万ドル)で一一・五%増、ビーチウェア一千四百三十万ドル(同七百九十万ドル)で八〇・二五%増、婦人用下着類は一千三百八十万ドル(同八百八十万ドル)で五六・八%増だった。同協会によると業界不振のあおりで廃業した会社も数多かったが、これに耐えた会社は輸出促進に加え、試行錯誤を繰り返しながらも設備の近代化に投資を行ったという。さらに業界では年内までに十億ドルが先行投資されると予測している。
ビーチウェアの大手バリゼーレは本年九百人の新規採用を行った。この数は昨年同期比四〇%増。これまでは年間百人程度が平均だった。同社によると、昨年は五十万着を輸出したが今年は百五十万着の見通しだという。これは同社の製造量の一二%に相当するが、来年は一八%から二〇%に増加するとの予測だ。本年の製造は一千四百万着(昨年対比四百万着増)だが、来年は二千二百万着を見込んでいる。その原動力は今年の新規採用者九百人の双肩にかかっているという。
子供服の大手マリソルでは、昨年の雇用はわずか百十七人。それ以前の二年間はゼロだった。今年はすでに三百七十七人を採用、年末までにさらに二百八十人を予定している。これにより従業員は五千八百人に達する。また、紳士服のマッシュは六月に百人を採用するとともに十五万ドルを機械設備に投資した。これにより製造量を倍増する計画だ。