8月18日(水)
【ヴェージャ誌】コンピューター・メーカー大手『HP』のカルリ・フィオリーナ社長が、業界視察のため来伯した。同社長はIT革新が必然的に政府の能率とモラルを向上させ、政治も変わらざるを得ないようにすると話す。
同社長はヴェージャ誌の記者会見に応じ、次のように時代の変化を説明した。
【デジタル時代とは】写真を見れば、いま何が起きているかすぐ分かる。写真は現像が不要になり、よい写真が撮れたか否かすぐに分かる。インスタント・カメラで撮った映像を、即時に地球の裏側へ電送することができるのだ。
これは想像もしなかった現実が、目の前で起きているという明白な事実を示している。こうした現実は一国の政治も会社の経営も個人の生活も全て、時代の変遷に合わせて変革せざるを得ない事態に追い込んでいる。
デジタル技術は、政治を始め全ての活動を取り込み、現実的かつ具体的で誰の目にも納得できる形を造らせる。私たちは現在、近代社会の構造変化を観覧しているのだ。国境は最早、世界を飛び交う情報の障壁ではない。情報は力の源に変化する要素を有している。
【IT技術が情報を力の源に変えるとは】人間の道徳観念を定義するには、技術の開発よりも多くの時間を要する。スリのような軽犯罪が発生したら、その是非は法律で決まる。しかし、犯罪にデジタル技術が利用されると、是非を判断するのに時間がかかる。
デジタル倫理観は微妙だ。またバイオテクノロジーの倫理観も微妙。クローン技術に関する倫理観は、何をもって基準とすべきか。答えのない疑問が次々、続出する時代がやってきた。倫理感と道徳感の狭間で、人類は翻弄されている。
【先進国と途上国の間に横たわるデジタル技術の格差を、どう埋めるか】それは民族意識と意欲、貯蓄の総合点にかかる。決定的なものはない。ブラジルの場合、四つの課題に取り組む必要がある。第一はグローバル経済への挑戦。これは経済の生命線となる。第二が教育への投資。これは国際競争力の育成。第三が経済環境の整備。フェアな商業システムを学ぶ。最後に技術革新、技術開発への投資。これが進歩の秘訣といえる。
【万年資金不足の国に投資は・・・】資金が有り余っている国はない。国家も企業も慢性的な資金不足に悩まされている。企業は優先事業を絞り、一点突破主義を採る。究極の技術革新が、新しい道を開く。資金不足を補うのが教育で、地味な努力がものをいう。
【インドという国は】ブラジルもインド並みの技術立国になれる。真似る必要はないが、インドのよいものを取り入れる必要はある。インドは十年前、IT世界地図に存在しない国であった。インドが現在、IT先進国となるためにはそれなりの努力をした。チャンスを生かしたのだ。
【デジタル業界で成功する秘訣は】適応性に尽きる。国家に企業に国民に、適応性を叩き込む必要がある。結果として実用新案が生まれ、競争力も生まれる。つねに企業は、革新と意欲を求められている。
【政治への進出は】全ての組織の長には、潮時がある。後任が育ち、より実力を付けて来たら席を譲るべき。そのときは選択肢として政治があってもよい。政治は全くの素人だが、未知の世界に入ってから泳ぎ方を学ぶのが私の流儀だ。
【差別の体験と助言は】屈辱の体験は勿論ある。それに打ち勝つには、自分を信じること。相手をして虚に付け入れさせないこと。スキを与えないこと。いうのは簡単だが、実行は至難の業だ。そのためには不断の努力がものをいう。もう一つの助言は、信用でき能力もある友人を持つ。能力は無数の顔を持っている。そして捨てる神と拾う神が必ずいる。
【会社の系列化と女性の立場は】企業の再編と系列化は事実だ。その流れに振り回されるなら、女性管理職の場は縮小される。能力には無数の側面があることを信じられるなら、その限りではない。女性に有利な環境もあることは事実だ。
【後輩女性への助言は】性別に関係なく職務に必要な素養と自信を養うこと。同時に尊大さを謹み、おくびにも見せないこと。実行力を持ちクヨクヨしないこと。ものごとの流れが一歩先まで読めるように、感受性を磨く。ビジネスの世界に男女別競技はない。