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05年に石油完全自給へ=計画を1年前倒し=国際石油情勢緊迫化に布石=技術的問題は多く残る

8月12日(木)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】ペトロブラス石油公団は十日、世界情勢の緊迫化に伴って〇六年石油完全自給計画を一年前倒し、〇五年末までに完全自給体制を確立することを明らかにした。国産原油の採掘目標、日産百八十五万バレルは達成の見込みと同公団はいう。原油生産コストをバレル当たりわずか三十ドルから三十五ドルに抑えるよう設備投資を行ったことは正解だったと同公団は評価した。ブラジルは現在、消費する燃料の一〇%を輸入している。

 石油の完全自給体制は公式発表ではないが、世界情勢を考慮して体制づくりに踏み切ることでペトロブラス石油公団は認識が一致した。国内の燃料消費量も増加の一途にあるが増産体制も拡充し、完全自給を達成すると同公団は意気込んでいる。
 国際原油市場は四十ドル周辺で変動していたが、十日には四十五ドルを突破し最高値を更新した。この相場が長期間続くとは誰も思わないが、中近東情勢が後戻りできない事態にあるため、原油の国際市場が新たな局面に突入したと同公団はみている。
 石油輸出国機構(OPEC)の設定価格バレル当たり二十二ドルから二十八ドルをはるかに超え、長期的には三十ドルから三十五ドルで原油価格が推移することを石油輸入国は容認していた。しかし、最終的には四十ドルまでは忍ばざるを得ないが、はたしてこれは新局面入りしたことなのかという疑いがある。四十五ドルは異常で悪夢だという思いが、輸入国の脳裏を交差している。
 石油公団技術部にとって自給体制は、理論的には可能という段階で留まっているのが現実だ。ブラジルは産業用と国産原油不足分補填用のディーゼルオイルを引き続き輸入している。国産原油で完全自給するには、技術的に未解決の問題が多く残されている。そして生産の伸びに比例して消費も年々急ピッチで増加し、その差はゼロに近い。
 ついに四十五ドル代といわれた十日のニューヨーク原油市場は、イラク石油の生産体制が整いつつあるとして、四十四ドル七一セントに戻した。しかし、原油暴騰の背景には全く変化がない。短期的には多少の値下げはあってもイラク情報は全く信用できないとして、九月にはバレル当たり五十ドル代へ達するという悲観的見方もある。
 ペトロブラスは十日、十三日からガソリンを値上げすると発表した。予想では約一〇%。鉱動省は国際石油情勢を分析してから、国内価格の調整を行うと述べた。
 米国と中国の燃料消費やイラクの石油生産、サウジ・アラビアのテロ、ロシアのユコス石油に始まった異変など、石油を取り巻く世界情勢は混沌としているとロウセフ鉱動相は述べた。国際価格が四十五ドルで定着するなら、国内価格もそれに準じるという。
 原油の先物市場は強気で拡大傾向にあるが、まだブラジルは確固とした石油政策がない。先進国では原油の採掘コストがバレル当たり十六ドルで、原油採掘は採算性の高い事業とされる。しかし不安定な国際情勢の中、利益を直ちに消費者へ還元することはできないと同相は通告した。