8月11日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】イタウー銀行の〇四年上半期の営業益が十七億レアル以上、年間で三十一億レアルに達するという銀行関係者の噂だ。イタウー銀行は金利の上乗せで儲けているのではなく、信用の創造で営業益を上げたのだと、同行のロベルト・セットゥバル頭取が社会の誤解に対し反論した。
直ちに金利引き下げへ応じられない理由を、重税と強制預託金、債務不履行の三重苦に原因があると同頭取が銀行の立場から釈明した。心配なのは大衆に迎合し、社会の圧力に屈する政権が誕生することだという。また起伏の激しい高度成長よりも、三%の低成長で長続きする堅実経済が望ましいと述べた。
ブラジルが六%の経済成長を保持するには、電力と運輸のインフラ整備に莫大な資金投下が必要。インフラ整備の後に、不動産ブームが来る。イタウー銀行は不動産ブームを視野に入れポン・デ・アスーカルとともにイタウー・ポンデアスカル投資銀行を立ち上げた。同頭取は、ブラジル経済を次のように見ている。
【ブラジル経済の見通し】 米公定歩合の引き上げで国内の金融市場が、直撃されなかったことは特筆すべきこと。原油の高騰などインフレの原因になりそうな不安要因はまだある。ペトロブラスの躍進が、原油の海外依存から早く解放するように願う。
【経済成長率について】六%成長は長続きしないと思うが、三%なら長期継続は困難ではない。それに着実な成長は所得増加と雇用創出、投資促進、クレジットの膨張と、弾みのついた波及効果がある。逆に長続きしない高度成長は、莫大な不良債権を生み出し、運転資金の豊かでない企業を軒並み倒産させる。
経済成長のためには、莫大な資本投下と充実したインフラ整備が必要。その前提条件となるのが、国民や企業の貯蓄。その貯蓄が無いのに外資導入だけに頼るのは虫が良すぎるし、国際投資家から信用されない。企業の剰余金確保の前提条件は、企業が能率向上と技術革新で現状よりも多い利益を計上すること。
【官民合同プロジェクト】これは一選択肢だ。そのためには、政府が投資のための魅力的な「基準」を設定する必要がある。ブラジル政府が信用に値する健全な政権であることを示すには、政府の歳出が多すぎる。税収内の歳出を徹底しないと国際投資家から信用されないし、国家の興亡はこの一点にかかる。政府は社会保障制度改革や税制改革などの財政改革に取り組んだが、まだ序の口だ。
【基本金利と銀行金利】批判の対象となる銀行金利について、法人と個人を区別すること。法人の場合、大企業は豊富な低利資金を有するから問題外だが、小規模零細企業が問題。全般に運転資金に乏しく、債務の期限内決済ができずに資産内容が貧弱だ。抵当物件とする資産もない。
小規模零細企業が高利の資金を運用しているのは知っているが、銀行もハイリスクを負う。それが個人となると、さらにハイリスクだ。銀行から融資を受けた借入人が、いつ勤務先を解雇されるかは分からない。すぐに再就職できれば良いが、その保証は全くない。
もう一つの問題は抵当物件の不動産を接収するのに、ブラジルでは五年もかかる。外国では、五カ月でできる。銀行にとって、この差は大きい。ここでも、低金利にできない理由がある。
【低所得層への低利融資】低所得層が職を担保として引き出す融資に伴う債務不履行のリスクは、民間銀行にとっては重荷。民間銀行は、営利団体であって慈善団体ではない。営利団体は、利益が空から降ってくるのを待つ植物ではない。自分から餌を求める動物なのだ。
【未来の金融制度】自動車のローンは低利のモデル。自動車市場が成熟しており、債務不履行の取り立てシステムも完備しているからだ。この自動車ローンのシステムを、他の業種にも応用することを検討中だ。
近未来、このローンのシステムが住宅に応用されると信じる。まだ住宅購入者は、失職のリスクを心配している。経済が三%で堅実に成長するなら、失職のリスクも解消され、住宅ローンも定着する。