8月6日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】世界貿易機関(WTO)は四日、EUが供与していた砂糖生産者に対する補助金を貿易ルール違反と見なし国際基準に準じるよう要請した。WTO裁決は、砂糖輸出の新しいルールとして関係者から歓迎された。同裁決は、〇四年で米政府の綿生産者に対する補助金問題に続き、ブラジルにとって二度目の快挙となった。外務省と砂糖生産者はWTO裁決で、新規投資と砂糖輸出の増加が見込まれると祝杯を挙げた。
先進諸国にとっては農産物補助金の牙城が次々崩されることで、食糧政策が安全保障上の新しい問題となっている。発展途上国にとってはWTO裁決が砂糖と綿に止まらず、円滑な農産物輸出の障害となっていた障壁を次々と排除するきっかけとなりそうだ。
先進国政府の鳴り物入りで行われてきた農産物補助金制度を、WTOは俎上に乗せる方針とみられる。先進国の自己中心的な食糧政策により、途上国の飢餓問題が看過されてきたことの不合理性を国際機関がようやく取り上げ始めた。
WTO裁決は仮処分であっても大きな前進と、外務省と砂糖生産者が拍手を送った。同裁決がもたらす効果は四億ドルと、ブラジル政府は見る。一方、世界銀行(IBRD)は十六億ドルと算盤を弾いている。EUの砂糖生産者は、WTOへ控訴する構えでいる。
ブラジルとEUの砂糖生産技術を比較すると、雲泥の差がある。しかし、EUは六八年から補助金制度を導入し、輸入国から輸出国へ転向した。EUの砂糖輸出量は〇二年、ブラジルに次いで世界第二となった。ブラジル産砂糖の生産原価は、EU産の約八分に一に過ぎない。
EUは、資金力を背景に砂糖輸出に力を入れた。ブラジルはオーストラリアやタイと共闘で〇二年、砂糖市場の矛盾をWTOへ持ち込んだ。EUは補助金システムを改めるとして、ブラジルの矛先をかわした。しかし、EUは補助金付き砂糖輸出を百三十万トンまでに制限する協定を破り、五百万トンを輸出した。
アモリン外相は砂糖勝訴が、補助金廃止を協議するドーハ・ラウンドへ大きく影響するとみている。ルーラ大統領も、良いこと続きのWTOで上機嫌だ。社会経済開発審議会の席上で外相の予想を取り入れ、ドーハ・ラウンドが短期間に百億ドルの賜物をもたらすと、大統領が壮語した。
〇四年末までに、南米全国をメルコスルに引き込むと宣言、途上国の発展を妨げた農産物補助金を廃止へ追い込み、WTOパリ(ジュネーブとパリを勘違いして)会議から凱旋するとルーラ節を披露した。WTO裁決とドーハ・ラウンドは、同じWTOでもチャンネルは全く異なる。
ブラジルの砂糖生産者協会(UNICA)は、WTO裁決を「ブラジル農業のノルマンディ上陸作戦の日」と位置付けた。二年以内に白砂糖を二百万トン増産し、七億ドルを稼ぐという。綿と砂糖の勝利は農産物貿易の分水嶺であり、これまでの制約付き制度から実力の時代へ入るのだと闘志を燃やした。