8月6日(金)
サンタカタリーナ州のラーモス移住地は、今年四月に創立四十周年を迎えた。現在、ラーモス日伯文化協会(尾中弘孝会長)は記念誌編纂作業を進めており、十月には全二百五十ページで出版される予定になっている。このめでたい年に相応しく、同移住地の草分け、小川和己さん(75、長崎県)が同州で民間人が受ける最高の栄誉であるアニタ・ガリバルディ章を、日本人としては初めて受章することになった。
当初、一九六一年に南大河州サンタマリアに移住した小川さんは、六四年四月九日、当時のJICAやポルト・アレグレ総領事館の薦めでラーモス移住地最初の入植者となった。州都フロリアノーポリスから南東へ約三百キロ。現在でも近隣の町までは未舗装道路になっており、度重なる陳情が続けられている。
この記念誌の編纂委員長はやはり小川さんで、一昨年から準備が始められていたが、このほど十月には刊行できる目途がついた。今まで同移住地にはまとまった移住史がなかったため、編纂作業は困難を極めたという。二十八家族が居住し、梨、柿、りんご、にんにくなど、温帯落葉果樹栽培を中心とした営農が中心となっている。
編纂委員の一人、山本和憲さんは「例えば、ずっと前から続けられている移住地の催し物なのに、第何回なのか分からないものがあった。いろんな人にいつ始まったのかを尋ねたが、人によって答えはまちまち。文章として残っていない記録が多いので、事実を掘り起こす作業が大変でした」という。
そのような成果として、移住史の詳細を記す年表が日ポ両語併記で、豊富な写真と共に掲載される。その他、ルイス・エンリッケ・ダ・ジルヴェイラ州知事、陸軍少将の小原彰・スエコ夫妻からの祝辞、剣道場「文武館」を持つ有名なラーモス剣道部の沿革、日本の作家・角田房子さんの随想「ブラジル南部の旅」、日語生徒作文「雪」「ラーモスの動物たち」から気温・雨量統計まで、豊富な内容が網羅される予定だ。
一方、民間人最高の栄誉、アニタ・ガリバルディ章の小川さんへの授与式は、八月二十一日に州都で行われる。ニッポ・カタリネンセ協会の高杉オルガさんによれば、「本当に州への貢献の大きな人にしかもらえないもの。日本人としては初めてです」という。
「身にあまる栄誉です」と、小川さんその喜びを電話口で語った。前州知事のエルペルジョン・アミンさんが今月十九日、地元紙ジョルナル・カタリネンセに小川さんを顕彰する一文を掲載するなど、平和運動に関する貢献が認められて受章となった。
同移住地には、世界でニューヨーク国連本部とここにしかない長崎の「平和の鐘」がある。〇二年十月には平和の鐘公園の第一期工事が終り、盛大に開所式が行われた。昨年三月には州知事出席のもと、被爆パネルや資料を展示する資料館の定礎式を挙行し、今後建築を始めることになっている。
日本人移住者の少ない同州。先日の〃リンゴの里〃サンジョアキン三十周年に続き、ラーモスでも四十周年の快挙。小さな移住地だが、その存在感は大きいといえそうだ。