8月3日(火)
サンパウロ州グァタパラ移住地で茨城県出身の池津勝治さんがブラジルで初めて栽培に成功し(本紙七月二十三日報道)、去る七月下旬、サンパウロ市で行われた第七回日本祭り会場で秋田県人会が手づくり料理を紹介して好評を得た「山くらげ」が、予想以上に栄養価が高い食材であることが判明した。
食物繊維が豊富なことに加えて、十七種類のアミノ酸、ビタミンB1、B2、カロチン、ミネラル成分などが豊富で、貧血や動脈硬化の予防にも効果があると言われている。
中国では清王朝時代(一六一六~一九一二年)に皇帝に献上され〃皇帝菜〃とも呼ばれていたほどのすぐれた野菜だ。「栽培には農薬を一切使っていませんが、虫も鳥も寄りつかず、うどん粉病にも罹からない、不思議な野菜ですよ」と栽培者元祖の池津さんは首をひねる。
種子を蒔いてから約九十日で収穫できる。同じ移住地に住む佐賀県出身の脇山謙介さんも池津さんから苗木を分けてもらった一人だ。初めての試みなので、栽培の適期を模索中だ。千寿子夫人が家族の協力を得ながら混ぜ御飯や柚子味を加えた味噌など、素材の特徴と栄養価を引き出す料理の開発に励んでいる。
サクサク、コリコリ、という舌ざわりが食欲をそそる。直径三センチほどの棒のような茎の上皮を薄く削り乾燥させるが、削り加減が難しい。「こんな厄介なことを止めよう、と思っていたら注文が来て、止めれなくなった」と池津夫人の澄子さんが述懐するほど皮むきに手がかかるようだ。皮をむいた茎を縦に四等分に開いて乾燥すると細い箸のようになる(写真)。
本紙記事を読んだ読者や日本まつり会場で食べた人たちから材料(乾燥山くらげ)の注文が何件も届いているが、今年はもう期待に応えることができない、と池津さんは残念がっている。
その側で、グァタパラ文協の川上淳会長(同じ茨城県出身)は「このように脚光を浴びるとは予想もしなかったが、山くらげが(グァタパラの)特産品の一つになる可能性が見えてきたので、来年はより多くの皆さんに栽培を奨励して健康食材を普及していきたい」と意欲満々だ。日本祭りから生まれた明るい波及効果の一つであろう。