7月31日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】中央銀行の通貨政策委員会(COPOM)は二十九日、七月の議事録を公表し、基本金利(SELIC)は年利一六%で据え置き、しばらく引き下げないことを明らかにした。中銀は〇五年度の予想インフレ率が、目標の四・五%を上回る可能性があると認識し始めた。最近の経済回復により現行レベルのSELICでは、インフレ率を抑制できないとCOPOMは懸念している。
COPOMは〇五年のインフレ見通し悪化に伴い、基本金利の引き上げはあっても、引き下げは年末までまずないという認識を示した。執拗な潜在的インフレ圧力が継続し、年末までに衰えを見せないなら、基本金利の引き上げに踏み切らざるを得ないとした。
インフレは鎮静したと安堵していたCOPOMが、インフレ圧力を懸念したのは今年に入って初めて。経済回復の勢いは、消費者物価の動きに表れ始めた。これは新中銀理事に就任予定のアゼヴェード氏も、上院の口頭試問で持論を展開していた。
物価統制を超えたインフレ・リスクもさることながら、固定電話料金の値上げと市場の潜在的インフレ圧力が六月のインフレの原因と中銀はみている。金利引き下げは、〇五年のインフレ次第とCOPOMは考えている。
中銀は、構造的インフレを盾にした一斉便乗値上げを恐れている。一例として電話料金は、年率六・一%の調整とみていたが、実際は一二・八%となった。電気料金は一一%が一一・六%へ。各種契約は七・七%のインフレ調整が、八・三%へ引き上げられた。
COPOMの中心議題はインフレを抑止して、いかに経済を回復するかだった。製品価格を調整することなく増産ができる部門の強化と、インフレ要因となる部門の縮小が検討された。投資環境の整備が、最終的に求められた。
社会経済開発銀行(BNDES)のレッサ総裁は、インフレ抑止は民間企業の協力によって実現するもので政府の経済政策ではないと主張。そのためには融資の拡大による企業への金融支援が、政府に求められるとした。中銀が金融引き締めにこだわるのは、本末転倒と批判した。
これまで経済政策によるインフレ抑止は、失敗の連続であったという。インフレは馬に似て、手綱を緩めれば馬は暴れる。中銀が手綱を緩められないのは、インフレが怖くて手綱を絞めっ放しにし、馬の走らせ方を忘れているのだと総裁は批評した。
一方、新理事に就任予定のアゼヴェード氏が古巣のフリート・ボストン銀行顧客筋に中銀への出向を通知したことで、パロッシ財務相と中銀総裁が就任へどう関与したか議会が説明を求めている。前理事の辞任に伴い、中銀に対する風当たりが強くなると予想される。中銀の実体とCOPOMの内幕に迫る動きとみられる。
野党は中銀総裁の疑惑関与で、しのぎを削っている。しかし、政府はカンジオッタ前理事の辞任で脱税疑惑は幕を引いたとみている。中銀総裁は元PSDB所属の下議であり、政治的後ろ盾を有することで大事に至らないという読みがある。一応火は消したが、火種はまだ残っている。