7月20日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十九日】大統領府は十六日、麻薬取引に関係する場合に限り航空機撃墜に関する法を決定した。大統領令は、十九日付け官報に公布され、九十日後発効する。同令は五項目を撃墜に先立つ確認事項とし、八項目で撃墜対象機を定めている。米偵察機など外国の軍用機によるブラジルの領空侵犯に対しては、強制着陸や飛行許可の確認に応じなくても、同令は適用されない。正当防衛による撃墜の場合は、国連の規定の基づいて判断をする。
同令は撃墜に先立ち、次の八項目を確認するという。一、領空の航行許可有無と許可された航路内航行の確認。違法取引の無法航行確認。二、航空機の飛行許可の確認。三、民間航空機の登録有無。四、身元確認中の監視飛行。五、無線連絡による応答、出国先、行き先、積み荷内容の確認と非常用国際航路への誘導。六、点検のための航路変更と着陸指示命令。七、強制着陸と連邦警察による臨検。八、命令無視の場合、威嚇射撃の執行など。
以上を確認した後、違法活動と見なされると発砲となる。さらに次の五項目が要求される。一、発砲を執行する場所は、住民居住地域外の上空で麻薬取引のルートであること。二、発砲には、大統領または空軍責任者の許可を得る。三、執行は、国防省航空局の管理下で行うこと。四、発砲決定に至った経緯は、録音をすること。五、撃墜執行の技術的責任は地上管制官と執行者が負う。
撃墜許可は前政府の九八年にカルドーゾ前大統領によって拒否され、以後撃墜は事実上禁じられていた。今回の大統領令は、国防省と法務省、外務省、大統領安全保障室が条文を作成。大統領令公布から九十日以内に隣接諸国へ、特にアマゾナス州と接する国々へ公式に通達される。
政府は犯罪に関わる米機を撃墜しても、対米関係が損なわれることはないとみている。ペルー軍が宣教師団を乗せた米民間機を、麻薬輸送と誤認し撃墜したことがある。米政府は〇一年、犠牲者の家族に損害賠償の支払いを要求した事件がある。
同令は、二つの事態を想定した。ブラジルの領空で規定外航路を無許可航行し、出国先も行き先も不明の場合と麻薬供給地から密売組織ヘの麻薬ルートの航行の場合だ。ブラジル領空への不審機飛来は〇三年、南部で一千九百七十一件、北部で百四十六件。〇四年は五月までに南部が四百七十六件、北部は五百六十件と記録されている。
同法の決定に至るまでは、米政府の圧力があった。それはブラジル領空での米機による撃墜に対し、米政府が責任追求をされないとする内容の議案の米議会承認後に同じ内容を同法に盛り込むというもの。
さらに米政府は、ブラジルを始めとする南米諸国が同一内容の同法を公布するよう要求した。米案を受理しない場合、ブラジルにおける軍事協力を中止すると五月に通告してきていた。ヴェイガ国防相は外交ルートを通じて圧力に屈することなく、原案通り発令に至ったと述べた。