7月20日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】サンパウロ市郊外の公立病院や医療機関は相変わらず医師不足に悩まされている。このため患者は診察予約を入れてから二カ月以上待たなければならないのが常で、また予約当日指定の時間に行っても長時間待合室や廊下の壁を睨んでいるという状態だ。これを嫌って中心部の医療機関に通っても交通機関の乗り継ぎなどで一日がかりとなる。
医師が郊外勤務を嫌う第一の理由は治安だという。これまでに数多くの医師が勤務地区で稲妻強盗の被害にあっている。白衣の〃お金持ち〃は格好の標的となる。また、病院に運び込まれて死亡する患者の約二五%が殺人事件の犠牲者であることも大きな原因となっている。南部のグラジャウ地区では二〇〇一年の病院での死亡者千四百八十二人のうち二五%が殺人によるものだった。ジルジン・アンジェリカ地区でもほぼ同率、シダーデ・チラデンテスでは六百五十三人の死亡のうち百三十八(二一%)東部地区のグアィナゼス地区では千二百八十六人の一五%の百九十一人となっている。これらの死者を医師らは目の当たりにしている。
五月に市が行った急募には二千五百七人が応募し千百二十一人が合格した。このうち八百五十九人は勤務を受諾したが、残りは勤務先を不満として応じなかった。西部および中西部地区のいわゆる犯罪発生件数が少ない地区はそれぞれ二百五十九人、九八人と求人が満たされた。しかし東部地区は百二十人(求人三百十人)南部地区百三十四人(同二百六十五人)北部地区は百五十六人(百九十四人)の結果となった。市は基本給二千百五十五・九〇レアルにプラス二五%から五〇%のボーナスという好条件を提示したにもかかわらず、必要数に達しなかった。また遠距離も勤務拒否の理由となっている。
一方、長年郊外で勤務している医師は、郊外には貧しいながらも人情味あふれたコミュニティーがあり、そこに解け込むことが重要だと指摘している。住民らが身辺警護しながら大事に扱ってくれるとの声も多い。同医師は「何といっても彼らには医師が必要だし、医師には使命がある」ことに言及している。