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コラム 樹海

 拉致被害という言葉は大嫌いで人々を不愉快へと駆り立てる。この悪辣非道な事件が北朝鮮によるものだと解かれば尚更のことである。警察の調べでは被害者は十数名らしいけれども民間団体では百五十人は下らないと見ているらしい。何の罪科もないのにある日―突然襲われて船に閉じ込められ北朝鮮に連行されて行く。れから先の北朝鮮での暮らし方は謎と謎に包まれ今もって不明のままなのである▼こんな悪夢からやっと解放され曽我ひとみさんが夢にまで描いた日本に家族と一緒に帰ってきた。夫のジェンキンスさんの病気はかなり悪いようで羽田空港から病院に直行し診察を今日にも始めるという。二人の娘さんの胸に北朝鮮の象徴でもある金日成バッジはなく、拉致問題の解決を願う青いブローチが着けられていたのも歓迎の人々に感銘を与えたのも嬉しい。脱走兵の罪を問われるジェンキンスさんの難問もあるけれども、曽我さん一家が平和な暮らしができるようにと祈りたい▼それにしても曽我ひとみさんは幾多の苦労にもめげず思いやりの豊かな心の持ち主である。病院に着いての第一声が「やっと帰ってこれました」がなんともいい。応援してくれた人々への感謝も深い。インドネシアでは飯村豊大使が和牛のステーキを御馳走し励ますという真に粋な心遣いを見せて呉れたし日航も全日空もチャーター代金を5万円で取り仕切るという大勉強で意気を見せた▼こんな幅広い支援を受けながら曽我さん一家が一日も早く立派な日本人になって欲しい。      (遯)

04/07/20