7月7日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙一日】〇四年七月一日をもってレアル・プランが、十周年を迎えた。レアル通貨は世界にも類稀なハイパー・インフレを退治したが、所得格差の是正はできなかった。一方で高金利政策を生み経済の息の根を止めた。
レアル・プランはその効果を世界が疑問視し、対伯与信が枯渇する中で発表された。全経済分野にすっかり定着していた価値修正制度を、新通貨は内部崩壊させた。過去十年間のインフレ率は一四三%。それ以前の十年間、インフレは二千億パーセントだった。
レアル通貨の前はクルゼイロ・レアル通貨だったことを知らないブラジル人が、六千八百二十万人いる。通貨の安定で一番喜んだのは、サラリーマンであった。その後、勤労者所得は低下、記録的な失業率に達し所得格差は悪化した。
通貨の安定は、高金利政策と公社の民営化で支えた。その結果、労働市場で二百六十万人が失職した。また国庫に資金不足という負の遺産をもたらした。国家財政は国内総生産(GDP)に占める債務の割合が、三〇%から五六・八%へと倍増した。
レアル・プランで失業した人たちを復職させるには六年半の間、平均三・五%の経済成長率を保たねばならない。レアル・プランは通貨の安定には成功したが、経済成長には失敗した。ブラジルの過去十年間の経済成長率は他の途上国のそれより劣るが、〇四年をもって屈辱と決別したい。
レアル・プランは、エリザベス・テイラーの八回目の結婚に例えられる。クルザード、クルザード2、ブレッセル、ヴェロン、コーロル、コーロル2、フンシオナル・プラン、そしてレアル・プランだ。リズは最後に、建築現場で働く二十歳の土方と結婚した。
レアル・プラン以前、フランコ副大統領はタナボタ式に大統領へ昇格した。同大統領は財務相を三人、矢継ぎ早に交替させた。インフレは同年、五五〇〇%も上昇した。ブラジルは外債の決済ができず、国際金融から札付きの落第生扱いで愛想も尽かされた。
そして登場したのがカルドーゾ財務相、クルザード・プランの立案者で古典経済学の異端児エジマール・バッハとアンドレ・レゼンデ、ペルシオ・アリーダ教授のPUCグループを引き連れ、クルザード改良型のレアル・プランを立案させた。
九四年七月一日、当時の一ドルに当たる二千七百五十クルザードをもって、一レアルとした。為替制度は変動性と固定性の中間で錨システムを取り入れた。数週間後、一ドルが〇・八三レアルとなり、輸入品が国産品より安価になる珍現象が起きた。国産品の値下がりが始まりインフレは鎮静した。
カルドーゾ元財務相は同年、大統領選に立候補して大差で当選した。カルドーゾ政権は、二つの誤算をした。通貨の流通量を制限したが、いつしか管理が杜撰になった。レアル通貨の高騰で、輸入品が蔓延し海外旅行が激増した。外貨準備が払底し、外資依存体質が始まった。
当時は国際金融市場の金余り現象で、外資依存が深刻な問題だとは分からなかった。しかし、寝耳に水のメキシコ危機、アジア危機、ロシア危機が訪れ、ブラジルは目を覚ました。国際的金融危機の中、外資導入のために高金利政策が始まった。高金利下で均衡財政を守るため、国債の垂れ流し発行を始めた。
カルドーゾ政権の第一期目末に、財政のほころびは露見していた。しかし、国民はインフレ鎮静による強いレアル通貨が、永遠に続くと思った。レアル・プランの全盛時代は、四年半で終わった。ちょうど、リズ・テイラーの八回目の結婚終焉と同じだった。