参院選挙の在外公館投票が先週終了した。サンパウロ総領事館に限ると、初めてであり、ある程度高い投票率が期待されたが、結果は同館の予想をはるかに下回った。投票率が高かったか、低かったか、見方はさまざまな立場でわかれよう。しかし、選挙人登録者数一万千人余で、投票者千九百九十九人という現実は、どうみても少なすぎる。真に残念な数字である▼在外選挙権獲得の時期が遅すぎたとはいえる。仮に、四十年前、戦後移民が生活基盤をつくるため、まだ〃苦闘〃していたころ、移民をこう支援したい、といった政党なり、候補者がいたら「票」はそこに集中し、投票率も上がっていただろう▼当時、移民を送り出した日本政府の出先機関などは「よきブラジルの市民として融け込み、貢献するように」と言い、日系社会も、そうすべきだ、という風潮だった。とてものこと「在外選挙権獲得を」といった空気ではなかった▼時を経、移民は高齢化、子孫とともによき市民になった。今、選挙の争点が小泉内閣のイラク、年金への処し方(への支持、不支持)といわれても、ピンとこないのは確かだ。直接的な関心事ではない▼よき市民になったと同時に、移民たちは活力をなくした。日本に全く関心を無くしたわけではないのに、直接の係わりをなくしたら、せっかく獲得した選挙権の行使をしない。日本は遠くなったとは考えたくない。忘れられたくもない。なのに今度の投票率の低調。もどかしさだけは消えない。(神)
04/07/07