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脳障害胎児に中絶許可=最高裁、仮判決下す=医療関係者、勇断に賛辞=全判事で8月に最終判決

7月3日(土)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】マルコ・A・メーロ最高裁判事は一日、胎児の脳に一部欠如がある場合の妊娠中絶を許可し、裁判所への中絶許可申請と担当医と妊婦に対する刑事責任の免除申請を不要とする仮判決を下した。最高裁は八月に全判事による公聴会を開き最終判断を下す。これまでは性的暴行による妊娠と母体の生命に危険が認められる場合にのみ、中絶が許可されていた。宗教界は、安易な脳疾患判断の乱用を恐れている。

 医療関係者からの中絶許可申請に対し最高裁のメーロ判事は、脳の一部が欠如する胎児が出生しても生存の可能性はなく、中絶と見なさず早期分娩という判断を下した。同ケースで起訴された全ての妊婦と医師は、訴訟却下とする仮判決も下りた。
 妊娠中絶の許可申請手続きを行ったルイス・R・バローゾ弁護士は脳疾患のある胎児の妊娠は妊婦にとって心理的拷問だという。中絶禁止は妊婦の基本的人権を損なうとした。脳疾患のある胎児は、人間として認められないというのだ。 
 医療関係者は異常妊娠で苦悩する夫婦を安堵させるとして、判事の勇気ある決断に賛辞を送った。これまで裁判所の判断は、倫理的段階で停止し、前進しなかった。産院によれば脳疾患の胎児は、千人に二人の割合で出まれる。最高裁の最終判決で中絶が許可されると、SUS(統一医療保険)の取り扱い業務に加わる。
 最高裁判事十一人は七月に休暇を取るため、連邦令に定めた妊婦の人権について再審理を行い、八月に是非の最終判断を下す。法令が認めない中絶に対しては、これまで妊婦に三年以下の禁固刑、医師に四年以下の禁固刑が言い渡された。
 最高裁では、すでに三件の訴訟が審理された。これまで起訴された妊婦らは、仮釈放処分となった。起訴中の審理は、堂々巡りをして結論が出たことはない。全国の裁判所で三千件の中絶許可が申請され、九七%は許可されたようだ。
 起訴された妊婦は現実と裁判所裁決の板挟みで、圧迫感に悩まされている。このような状況は裁判所に対する不信感と不安を妊婦に与えるとメーロ判事は判断した。最高裁の判事らは、妊婦と胎児に対し両人の健康と基本的人権、自由意志、生命の尊厳を検討する。
 今回の最高裁の判断は司法界で初めての仮判決として注目を集めた。メーロ判事はコーロル元大統領の従兄弟で、十一人の最高裁判事の中でも独特の見解を持つ話題の人物であった。ミナス州で九六年、鉛管工が十二歳の少女を犯し婦女暴行罪で起訴された。少女はその後も関係したとして同判事は鉛管工を無罪放免、全国に物議をかもした。
 ブラジル司教会議(CNBB)のアギネーロ枢機卿は、同仮判決は脳に障害があるとか頭が悪いというだけの理由で、安易な中絶に口実を与えると懸念している。生存の可能性がないとして中絶を認めると、胎児を死に至らしめる犯罪が横行する。それが合法行為としてまかり通る。出生以前の胎児に死を宣告する権利は、誰にもないと宗教界は考えている。