7月2日(金)
アテネ五輪ブラジル選手団最年少は日系少女――。
八月に近代五輪発祥の地ギリシア・アテネで行われる夏季五輪に、弱冠十六歳で出場権を得た日系人がいる。卓球女子ダブルスに出場するマリアーニ・マユミ・ノナカだ。今年二月にチリであった南米予選で見事、出場権を獲得したマリアーニ。十六歳での出場は今大会だけでなく、ブラジルの五輪史上でも最年少となる。日本では十五歳で五輪に出場する福原愛が、「天才少女」と注目を集めるが、ブラジルも負けては
いない。(下薗昌記記者)
「愛ちゃん」の愛称で親しまれる福原は三歳の時に、卓球を始めたことで知られるが、マリアーニが卓球の道を歩み始めたのも早かった。九歳の時にサンパウロ市内の日系クラブで、初めてラケットを握った。「当時はプロになるなんて思っていなかった。ほんの遊びだったの」と語るが、福原同様、マリアーニにも天賦の才が備わっていた。
すぐに関係者の目にとまり、数々の大会で活躍。ラテンアメリカ大会では四大会出場して全てに優勝している。また、昨年のパンアメリカン大会も経験するなど十一歳以来という国際経験も豊富だ。
そんなマリアーニだが、最高峰の五輪は別格だった。
「こんな早く出場できるなんて思っていなかった。四年後ぐらいに出られればいいなと思っていた。自分でも早いと思っている」
今年二月の南米予選では「出場しなければ」というプレッシャーがなかったことが好プレイにつながったと振り返るマリアーニ。「アテネでもリラックスしてプレーしたい。そうすれば結果がついてくる」と浮ついた姿勢を見せないところは十六歳とは思えない。
ただ、中国や日本、クロアチアなど強豪がひしめくだけに、厳しい戦いが待っているのは間違いない。「私がメダルを取れるかどうか分からない。ただ、全力を尽くすだけ」。
昨年から両親と離れ、ブラジル代表チームに帯同するためピラシカーバ市内で生活する日々が続く。日ごろは週に六日間、一日三、四時間を練習に当てているがここのところは国際大会への出場などアテネへの準備で学校にもいけない忙しさだ。「私は卓球が好き。練習に飽きることはないわ。皆が帰った後も、一人で練習しているの」と才能だけで勝ち取った栄光ではないことを強調する。
ブラジル卓球界といえば、同じく日系人の偉大な先人がいる。ウーゴ・オヤマ――。「ブラジルでは卓球といえば、皆ウーゴを思い出すでしょ。男子卓球に負けないよう、女子も結果を残せるように貢献したい」とマリアーニ。二月の出場権獲得以来、アテネに向け腕を磨いてきた。五輪で対戦したい相手は、過去に金メダルも獲得している中国のワン・ナンだ。「彼女と対戦することで、自分の力をアピールできる。今の最大の目標です」
今大会に留まらず、ブラジルの五輪史上最年少で代表を得たマリアーニ。八月の五輪期間中には、十六歳の日系少女に大きな注目が集まりそうだ。