MOCOCAは、石畳の道路にピンクや黄緑の家が並び、古びた教会が街の歴史を感じさせる。サンパウロから北々西に三百キロ。ミナス・ジェライス州との境界線。
フェス・タジュニーナのその日、通りを歩いていると黒人の二人組が話しかけてきた。なぜか、タクシーとビール三本のお代を耳子が支払い、彼の家に行った。
「なんだこいつらは」と怪訝な顔をしていると、奥の扉からかわいらしい少女が現れた。「この子は父親がいないんだ」。その言葉に怪しんでいたことを、申し訳無く感じた。
そのまま、彼らとフェスタに出掛けた。彼らは、一つだけ日本語を知っていた。「ありがとう」そう言って、さらに酒をおごらせようとした。そして、耳子は金を支払った。やはり、利用されていたのだ。
来伯して三カ月。ほろ苦い思い出がもう一つ増えた。(達)
04/06/30