6月23日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】英誌エコノミストは、ブラジルのハイチ派兵を評し「眠る巨人が、ようやく目を覚ました。世界政治地図の中で、ブラジルも自分の役割を果たすつもりらしい」と、次のような論説を寄せた。
ハイチへ派遣されたブラジル軍部隊千二百人は、小規模だが象徴的効果は大きい。第二次大戦後では、ブラジルにとって最大級の海外派兵だ。南米の眠れる巨人が、目を覚まし筋肉トレーニングを始めた。国際社会の中で米国覇権の縄張りに侵食して拠点をつくり、影響力を培う考えをブラジルは抱いていると思われる。
しかし、ブラジルの意図が米国のそれと重なることもある。例えば米国の裏庭ともいうべき中米に民主主義の定着と政治の安定を両国は押し売りする考えだ。この二つは、中米で最も必要とされている。
中米の一部の国では、ルーラ大統領の方が米大統領よりも説得力を持つ。これらの国では両国が自国を支持する各派を後押しし、対峙し合っている。ブラジルが肩入れする派閥が、現在は優勢。ベネズエラではアモリン外相が、チャベス大統領を説得し、同大統領の政権維持を国民投票で表決することにした。
ボリヴィアでも過激派カコレロスのエボ・モラレス氏を口説いて、ルーラ流民主主義が本領を発揮している。ボリヴィアでは、靴磨きから叩き上げたルーラ大統領の政治手法として高く評価されているようだ。
コロンビアでは、親米派の現大統領と麻薬戦争で共闘している。両国はアマゾナス州の衛星探知で麻薬撲滅作戦の成果を挙げている。またルーラ政権は、コロンビア・ゲリラ(FARC)との交渉仲介役も買って出ている。
ルーラ政権が積極的な外交政策に転じた裏には、アンゴラ派兵や東ティモール派兵などで、混乱の収束に成功したという自信がある。ブラジル政府には、海外派兵の指南役がいるのだ。
ブラジル史によるとブラジル人は、海岸のカニのように海岸線にしか生息しなかった。それが今は内陸全土を制覇し、残すはアマゾン地方だけとなった。そのフロンティア・スピリットには一目置くものがある。