6月23日(水)
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の月例懇談昼食会で十七日、マリオ・コーヴァス州知事時代にサンパウロ州財務長官を務めた中野ヨシアキ氏が「持続可能な発展をいかに再開させるか―アジアからブラジルへの教訓」をテーマに講演した。進出企業関係者ら約百人が熱心に耳を傾けた。
中野氏は、九七年にタイで始まったアジア地域の経済危機についてまず触れ、「インドネシアや韓国など多くの国が不況に陥ったが、大方の予想を上回るスピードで回復して来ている」と切り出した。
アジア危機の余波はブラジルにもおよび、九九年一月にレアル通貨が暴落、経済は完全に停滞した。一方、為替の恩恵を受けた輸出は伸び出し、「〇一年からブラジル経済に明るい見通しが現れ始めた」。
未曾有の経済危機で急減したアジア地域の輸出高は九九年から、電子・電気機器などの産業が持ち直したことを契機に再浮上。国際的な金融支援が重なって、通貨は安定し、国際流動性の確保も実現した。その結果、「外国資本の信用を回復した。危機への調整構造改革を通じ投資国としての魅力が高まった」と中野氏は指摘。「民間資金の再流入もあり経済はいま好循環している」とした。
また、アジア経済に関して、「持続的な成長のためには一層の金融システムの強化や構造改革が必要だろう」とも分析した。
最後に中野氏はブラジル経済の見通しを語り、「ルーラ政権の経済政策はオーソドックスで、国際信用を取り戻した。だが、ブラジルが東アジア並みの経済成長を実現するには、高金利政策の変更、為替の切下げが望ましく、重税、労働法の改正、工業と交通網のインフラ整備が前提となる。つまりブラジル・コストを減らさない限り、今後の継続的な成長は望めない」と結んだ。
五十九歳の中野氏は現在、ゼツーリオ・ヴァルガス大学経済学部教授。