新年号
ニッケイ新聞 2014年1月1日
世界中のサッカーファンの注目が集まるW杯の開幕まであと半年。日本代表チームは、先月6日にバイーア州コスタ・ド・サウイペで行われた抽選会の結果により、コロンビア、ギリシャ、コート・ジボワールと同居するC組に入った。絶対的な強豪国がおらず、実力伯仲するこのグループでは、3戦全勝も有りうるが、逆に全敗の可能性も否めないだけに、期待と不安が入り混じる。さらにキャンプ地はサンパウロ市からも近いイツー(イトゥー)市に決定した。もしかしたら休日には、東洋街に観光に来るかも――と想像は膨らむ。コロニアの皆さんにも、日本チームへの期待や予想を聞いた。
W杯日本代表への応援メッセージ
▼ずばりベスト8入り期待=「期待を込めてベスト8。実際にここまでいったら凄いよ」と話したのは松井英俊さん(74、東京)。自身も1950年代にサッカーを楽しんだ経験者でもあり、「水を吸うと硬く、重くなるボールで、裸足で蹴ると爪がはがれて大変だった」と当時を振り返る。
今回のグループ分けについては「キツキツな印象。とにかく予選は突破して欲しいけど…。日本チームは世界に比べて体力が足りないような気がする」と少し悲観的。「30年近く前に、日本を代表して読売クラブ(現東京ヴェルディ)が来伯したのを覚えているけど、こっちの草チームにも勝てなかった。どうしてもそのイメージがね」と苦笑いを見せた。
それでも「結果がどうあれ、日本の大和魂の輝きを見せるようなプレイをして欲しい」と期待を込める。注目する選手は前回大会でエースナンバーを背負った中村俊輔。「最近は(代表チームに)呼ばれていないようだけど、彼のキックは凄い。ぜひメンバー入りして欲しい」と話した。
▼「ぜひ日伯で決勝戦を」=二世の猪狩健二さん(66)にとって、やはり一番の優先はブラジル代表チーム。「ジュリオ・セザールにダニエル・アウベス、そして今や大スターになったネイマールもいる」と雄弁に母国のチームを語る。それでも、「日本はその次に応援している」と〃もう一つの母国〃についても好意的に話した。
日本チームの予選3試合は、レシフェ、ナタル、クイアバという気温や湿度の高い地域の会場となるだけに、「暑さへの対策が鍵になる。日本は蒸し暑い梅雨の時期からこちらに来るのだから、比較的涼しいヨーロッパのチームより有利さはあるのでは」という分析も。
予想順位を尋ねると、「予選グループは突破して欲しい」と控えめだが、「W杯の決勝トーナメントで、ブラジルと日本が試合をするというのは一つの夢。ぜひ日本には頑張って欲しい」と話し、期待感を示した。一方で、「万が一日本とブラジルが決勝で対戦することになったら、間違いなく一世の友達と喧嘩になる。あたるなら準々決勝くらいが理想かな」と冗談めかして希望を語った。
▼本田の活躍を見たい=23歳のころ、技術移住で来伯した重白征夫さん(70、大阪)は「サッカーは好きでよく見ている。W杯となれば必ず見ます」と熱を込めて語った。
サッカーに限らず、スポーツ全般が好きだと言い、1964年の東京五輪では10月10日の開幕式にも観戦へ訪れたという。「座席がたまたま聖火台の下で、当時の映像が使われるたびに、テレビに映ることがあるよ」とうれしそうに語ってくれた。
自身よりも奥さんがサッカー好きだそうで、オランダへ赴いた際には、日本代表の試合を観戦したほど。期待する選手にはMF本田を挙げた。
▼ただ無事に大会終えて欲しい=串間いつえ、山本英峯子さんはともに、「応援するのはブラジルが第一で、その次が日本かな。子どもも生まれたからブラジルを応援してしまう」と本音を語ってくれた。ただ日本代表のことを問うと、「昨年11月にはベルギーに勝ったから期待している」というニュースも周知しており驚きだ。
できる限り勝ち進んで欲しいと思いを寄せるも、「ブラジルは会場工事に対して非常識なところがある」と不安ものぞかせ、「事件、事故もなく大会が無事に終わって欲しい」と願いを込めた。
▼パスとスピードで勝負=平間浩二さん(73、東京)は「Jリーグはサンフレッチェ広島が逆転優勝したね」と話すほどのサッカー好きだ。自身の思いは「日本代表が武器としている、パスとスピードで勝ち上がって欲しい」。
「昨年末のヨーロッパ遠征ではオランダ、ベルギーと良い試合を続けた。組み分けを見てもグループ突破は大丈夫だろう」と話し、「MF本田やDF長友など、ヨーロッパで活躍する選手に期待したい」と思いをよせた。
▼孫と一緒ならブラジル応援=夫が大のサッカーファンだと語る戸山正子さん(70、埼玉)は、
「主人が抽選会の中継を見ていたから私も見ていた」と話した。組分けの結果を受け、日本代表にどこまで勝ち進んでほしいかという問いには、「まずグループ1位で勝ち進んで欲しい。決勝トーナメントで負けても、グループ1位なら面目も立つんじゃないか」と高い期待を込めた。
日伯どちらをひいきにしているかという問いかけには、「どっちも応援したいけど子ども、孫と一緒だったら、ブラジルを応援しなきゃいけないかも」と本音をのぞかせた。
▼なでしこに負けるな=戦前に親が農業移民したという、サンパウロ市在住の建本芳枝さん(二世)は、「日本なら何でも応援する」。「6月とはいえ熱い地域、広いブラジルで移動の疲れが心配」とも語った。
MF本田、香川など現役の代表選手は名前だけ知っているというが、「サッカー選手といったら、私たちの世代にとってはカズ(三浦和良)よ。若い時にブラジルで成功して、みんなが目指した憧れの存在だった」と誇らしく語った。
「なでしこ(サッカー女子日本代表)がW杯(13年)で優勝、ロンドン五輪(14年)で銀メダルを獲得したのだから、男子も負けないように」とエールを送った。彼女も夫の影響でサッカーを見るようになったというが、言葉の裏腹に高い関心度が伺えた。