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上院、最賃R$275で可決=議会根回しに失敗=官房と国対の確執表面化=政府、下院で最後の勝負

6月19日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】上院は十七日、新最低賃金を二百七十五レアルに引き上げる案を、賛成四十四票、反対三十一票で可決した。政府は政権を獲得して一年半、重要法案の審議に敗北を喫した。政府は予算の払い出しや天下り人事などで、根回しに奔走したが失敗した。最低賃金は再度、下院へ戻って表決の仕切り直しが行われる。政府は原案の二百六十レアルで、最後の勝負に賭けることになる。

 下院でも最低賃金が二百七十五レアルで承認されると、最後はルーラ大統領の拒否権発動だけとなる。上院での連立与党の敗北は、大統領府内でジルセウ官房長官とレベロ国対委員長の確執が表面化した結果とみられている。
 大統領府内の勢力闘争で業を煮やしていた大統領は、官房長官に行政府の采配に専念し、議会工作は国対委員長に一任するよう断を下した。ようやく経済活性化の兆候が見えたいま、政府上層部の内輪揉めに大統領は終止符を打つ考えであった。しかし、上院の最賃表決前日は大統領自ら電話で、小物議員にも協力票を乞うありさまであった。
 官房長官と側近らは、連立与党の敗北は目に見えていたと冷笑した。七日から与党の貧血症状は、現れていたという。最後の土壇場で官房長官は、大統領から議会工作を頼まれた。レベロ国対委員長の技量不足は、連立与党の誰の目にも否めないと噂されている。
 議会工作のツボが分からず無駄な努力で迷走した結果と、大統領の舵取の誤りを指摘する声が出ている。下院での最低賃金再表決は、二十九日または三十日に行われる。時間は迫っている。官房長官側近らの反応は、消極的だ。
 大統領から「たが」をはめられた官房長官は、謙虚に振る舞っている。東北伯出身の上議らに電話を入れ、国対委員長と二人三脚の活動で低姿勢だが、情勢を見据えつつ次の準備に怠りはない。お鉢はまた戻ってくるという見方らしい。 
 一方、レベロ国対委員長は大統領から、下院の表決に白兵戦で臨むよう命令された。連立与党は上院では少数派だが、下院では多数派なので心持ち安堵できる。もしも、連立与党が下院で敗北すると、議案否決だけでは済まなくなる。
 国対委員長は記者団に、予期せぬ造反が恐ろしいと述懐した。「ペレーのサントスも負けた。民主主義が負けることもある」と弱音を吐いた。上院連立与党の結束の弱さは、ルーラ政権の泣き所といえそうだ。
 上院の最賃二百七十五レアル可決が、憎まれ役を敬遠する下議らにはショックだったようだ。連立与党の中には、上院へ同調するという不協和音が生じ始めている。政府はインフレ率を上回るように最低賃金を調整するため、国内総生産(GDP)に連動させる副案も用意している。
 ジェノイーノPT党首は連立与党から十五人、足元のPTから三人出た造反上議に対し、許しがたい行為と非難した。年金改革で造反したPT議員四人を除名したこともあり、同党首は新たな除名の検討を示唆した。