6月19日(土)
一九八一年にパウロ・マルーフィサンパウロ州知事(当時)がテープカットして落成したニッケイパラセ・ホテル(上野アントニオ社長、四つ星)は現在、本館の改装工事を進めている。本館の百室に加え、将来は別館の八十四室を完成させる予定になっており、日本移民百周年に向けて〃新しい顔〃での受入れ態勢を整えている。
改装工事は昨年九月から進められており、進行中の八、七、六階部分のうち八階分はほぼ終了している。本館が仮オープンしたのは七九年。以来、リベルダーデの主要ホテルとして営業を続け、二十四年ぶりの大改装となる。全体的に明るい印象になるよう、通路・客室共に間接照明をふんだんに施し、白とベージュを基調とした壁・タイル・絨毯に徹底して改装している。暗くてくすんだ色調だった未改装部分とは雲泥の差だ。
同ホテルは約八割が日本人や日系人が利用することもあり、バスタブを和式のお風呂タイプにするなど、客層のニーズを強く意識している。各部屋でノートパソコンからインターネットができるよう電話端子も設置。NHK国際放送も視聴可能だ。
その他、各階に一部屋ずつ、長期滞在者用の応接間や簡単な自炊設備付きのスイートも、改装後にはお目見えする。
同ホテルの社長室付き顧問、西田康二さんは、現在進行中の部分は「今年一杯で完成予定です。お客様がいらっしゃるので、音の出る工事はできないので遅くなっています」という。現在、使える客室は満杯状態なので、七、八月に迎える日本からの来伯客の最繁期をどう乗り越えるかが、目下の課題だ。
西田さんは「客室が終わり次第、ロビーや入り口部分の改装も始めます」と語った。
同ホテルには、実は別館がある。九〇年に建設を始め、コンクリートの基本構造が出来たところで資金が尽き、翌年に中断し、現在まで本館裏に骨組みをさらしている。同ホテル出資者グループが約五百万ドルの追加出資を決定して今回の全面改装が始まった。
別館が完成すれば、イベントスペースと八十四の客室が増え、一気に二倍近い規模となる。本館の改装が終わり次第、別館に取り掛かる予定だ。
現在、サンパウロ市のホテル業界は大変な過当競争の渦中にある。日系人に根強い需要があるとはいえ、安穏とはしていられないのが現状だ。百年祭に向けて〃新しい顔〃が本領を発揮するには、この改装工事が重要な鍵を握っている。
上野社長の父で、北パラナのアサイで製綿事業で大成功したことでも有名な故・上野米蔵さん(福岡県出身)は同ホテルの社是を「日系人による日系人のためのホテル」と常々語っていたそう。百年の歴史を刻もうとする日系人が誇れるホテルであるためには、不断の企業努力も欠かせないようだ。