日本には苗字(名字)が多い。古くから「源平藤橘」とされ石井の姓は平家に属すると言われるなど、その昔は結婚する際などに障害となることもあったらしい。恐らく苗字の数は二十万を下らないのではないか。こうした方面を研究する専門家もいて世には姓氏に関した書籍も数え切れないほどある。読むのが難しいのも苗字であって沖縄の姓で「東上」を―確か「あがりや」と読む▼さて―。こんなことを記したのは法制審議会の部会が子供の名につける漢字として五百七十八字を追加する案を公表したからである。増やすのは大いに結構ながら―どうも気に食わない漢字が目立ち過ぎる。檎や撫はいい。桔も梗も素晴らしい。これからは「林檎」のお嬢さんや―きれいな紫の花を咲かせる「桔梗」の可愛い赤ちゃんがきっと出てくるだろう。が、糞や屍や姦とか淫はどう使うのだろう▼癌もあるし贋とか罵も列挙されているそうだが―正直に申すならば、とても我が子には使えない。法務省のお役人らは「親の価値観は多様化。漢字の意味にこだわらず、音だけで決めるケースもある」と語っているそうだけれども、これではあまりにも素っ気ない。机上の空論とは、こういうエリートお役人の言葉を申し上げるのではあるまいか▼さすがに堪り兼ねたのか「読売新聞」は相当に辛辣な批判記事を報じているが、国民の多くも賛成し支持していると思われる。子供にもちゃんと人権はあるし、世に出て恥ずかしくない名前が大切なのは言うまでもない。 (遯)
04/06/16