6月12日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙四日】「深酒による死亡が増加」-。サンパウロ州が初めて行った州民の死因調査で、心臓疾患に次いで肝臓障害が二位にランクされた。その半数以上が飲酒が原因とのこと。一般の病気は治療の進歩で死亡率は減少しているのに反し、肝臓障害は年々増加しており、死因のトップになることは時間の問題だと赤信号が出されている。肝臓の治療は臓器移植しかなく、臓器提供者が現われるまで平均三年はかかるので、移植待ち患者の五五%は事前に死亡してしまう。しかし世の常で、酒好きはおいそれとやめられず、ボテコやバールで唯一のいやしを求めているのが現状だ。
サンパウロ州が今回初めて公表した死因別の調査によると、三十五歳から五十九歳の男性の肝臓障害による死亡が、心臓麻痺に次いで二位を占めていることが判明した。これはSEADE財団(州立資料分析センター)が二〇〇〇年から〇二年にかけて州民の死因を追跡調査したもの。調査は州内各区役所に届けられた医師の死亡診断書に基づいて行われた。
それは肝臓障害の半数以上が飲酒が原因だと指摘している。九六年から〇二年の間に肝臓による死亡が一四・八%増加しているのに対し、他の死因が二一・四%減少している。これは他の病気が医療の進歩や薬の改善で治療効果が表われているのに対し、肝臓の場合、自覚症状が表れ難く、かつアルコールが体内に入ると〃るんるん気分〃になって一時的に元気が出ることで、病巣が体内をむしばんでいる事に気づかずに手遅れになるためとされている。したがって、このまま推移すると飲酒による死亡率がトップになるのは時間の問題だという。
「酒は百薬の長」と言われるのは適量の飲酒のことで、深酒が続くと食欲不振となり臓器疾患の原因となる。さらに同調査機関によると、深酒は社会の不景気を反映しているともいう。ピンガなどを安く飲ませるボテコやバールは失業者の唯一のいやしの場所だからだ。また交通事故や脳溢血などの隠れた原因になっているケースが多々あるという。
肝臓障害の治療は肝臓移植しかない。アルベルト・アインシュタイン病院によると、臓器提供者の待ち時間は平均三年で、五五%は移植できずに死亡するケースが多い。
調査結果によると、二〇〇〇年から〇二年の間に男性(三十五歳~五十九歳)十万人当たり、八十六・八人が心臓病、六十二・八人が肝臓障害、六十・八人が殺人、五十一・四人が脳溢血で死亡している。
また、州内都市別のアルコールに冒された肝臓による死亡者数は十万人当たり、リベイロン・プレット市が四十四・三人、マリーリア市が二十九・七人、バウルー市が二十九・二人、サンパウロ市が二十七・六人、レジストロ市が二十七・五人。以下サンジョゼ・ド・リオプレット市の十五・四人まで十都市が並んでいる。
これに対し三十五歳から五十歳の女性はやはり心臓系疾患がトップで、肝臓は五位にランクされている。関係筋によると、煙草の害を訴える強力なキャンペーンによって、八九年に国内の禁煙転向者が三一・七%に上ったのに対し、飲酒についてはテレビ宣伝が横行、未成年者への販売は野放しの状態である。
政府は、飲酒についてもキャンペーンを張る意向を示しているにもかかわらず、その原案も出来ていないのが現状だという。