6月9日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】イタリア政府農務省は二十五日、本家本物のピッツア・ナポリターナを有形文化財として保存することを決めた。偽物や模造品と区別するために、材料から作り方まで基準を設ける法律を官報で公布した。ピッツア令は、三ページにわたり八条から成っている。
本物のピッツアとは、丸いもので直径は三十五センチ以下。中心の厚さは三センチ以下、周囲は二センチ以下。材料は小麦粉と塩、パン種、トマト、ムッツアレーラ。ムッツアレーラは、南イタリアのモンテ・アペニーノス産のバッファロ牛の牛乳で作ったチーズか同品質のものを使用する。作り方は手で延ばす。延し棒や器械の使用を禁じる。生地はゴムのように柔らかく、紙のように曲がること。
一方、模造品では天才的なブラジルのピッツア店は、苦笑している。模造品はピッツアばかりではない。寿司から焼きそばも、すっかりブラジル化し定着した。本家本物のこだわりの握り寿司といっても、驚くことはない。日本にない寿司が、次々お目見えしている。
ブラジル人はブラジルのピッツアのほうが、にんにくやオレガノ、マンジェリコンなどが入り、本家のピッツアよりも美味しいと思っている。日本には本場仕込みという、こだわりのフランス料理やイタリア料理がある一方、日本人の嗜好に合わせた化け物みたいな西洋料理が闊歩している。
サンパウロ市だけで五千八百五十軒のピッツア店があり、百四十万個のピッツアが毎日消費される。五〇%は宅配。ピッツアの月間売上は、四億七千万レアル。これだけの量を、手や棍棒で延ばせるわけがない。
伊紙イウ・ソレは、法令化を徒労と嘲笑した。ピッツアは国際化し、一人一人が自分の嗜好に合わせ独特のピッツアを考案している。食文化の国際化とは、ピッツアやフェイジョアーダ、コーヒー、寿司でも、その土地で土地の材料を使って土地の人たちの好みに合わせて、変化するものだとピッツア茶番劇を批評した。