ピンガの呑み方には作法のようなものがあって「一気呑み」が鉄則らしい。通によると、舌に乗せるのではなく喉に向けてぶっつけるようにし胃の腑に流し込む。呑む前には大地の神様にカリスからちょっぴり捧げるのをお忘れなくとも。だが―これが難しい。喉元を目指すのはいいけれども噎せ込んでしまい肝心なピンガを吐き出してしまうのだ▼そんな醜態を見ると、戦前派の老移民は嬉しそうに大笑いしながら「ランビキ」で「強いからな」と楽しそうにカリスを傾ける。講釈を垂れたばかりの作法通り見事な呑むみっぷりに戦後派は惘然(ぼうぜん)としそれから拍手。これが夕暮れどきのバールの風景であり楽しいひとときなのである。怒り上戸や泣き上戸もいるらしいけれども、酒仙に悪人は少なく語り部が多いと赤提灯の辞典は教える▼老移民は語る。ピンガの香りや味が、メーカーによって異なるのは酵母の違いによるものだと説く。カンナを絞って酵母を入れて発酵させてからの醸成の長さにもよるが、基本的には砂糖黍と酵母の闘いで「味」が決まると熱弁し、ウジーナ(ピンガ醸造所)の善し悪しにまで論は及ぶ。近ごろのは余り旨くないのは、恐らくカンナの絞り過ぎによるの所見を滔々と述べるのだが、果たしてそうなのかどうかは未だにわからない▼こんなピンガ大居士はもう少ない。移民にピンガ党は多いけれども、本来の「ピンガ学」を語れる移民は寂しいながら―いないのではあるまいか。 (遯)
04/05/29