5月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】中国の上海を訪問中のルーラ大統領は二十六日、伯中同盟の挫折に向けて暗躍する国々が存在することを明らかにした。大統領は、これらの国に告ぐとして「同盟の成功に期待する国々の方が、数では多い」と通告した。両国の間で原子力協定検討の情報が世界を巡ったことで、ブラジルの在米公館に焦燥の声が上がった。バウチャー米報道官は、同件について一切の発言を避けている。
産業都市の上海で開催された伯中同盟結成祝賀会で、大統領は閉会の辞を即席で行い、国際外交では常に足を引っ張る国があることを示唆した。大統領は記者団の質問に答えて、ブラジルが音頭を取ったインドと南アフリカのG3に中国を加え、伯中同盟がけん引役となる計画を吐露した。
しかし、国際外交では発言の時間と場所を間違えると、不利な問題を引き起こすので公言は避けた。〇五年のG20途上国サミットでは中国を議長国とし、伯中両国の協力関係を緊密化する方針だと述べた。
ブラジルの原発建設資金を捻出するため、中国へウラン鉱石の輸出を検討するニュースは、世界へ大きな反響を巻き起こした。事態に驚いた科学技術省は二十六日、ウランの輸出検討を否定する声明を発表し、ブラジル政府に核物質の商業化政策も存在しないことを明らかにした。
しかし、中国政府は公文書をもって、ブラジルのウラン共同開発に強い関心のあることと、資金協力と技術協力を行う用意があることを表明した。
在米ブラジル公館では、伯中原子力協定の噂に戸惑いの色を露にした。米国ではFTAA(米州自由貿易圏)交渉が難航している中、それは戸惑いを超えて憤りにまで達している。米国の各紙はトップで、ルーラ大統領の訪中と両国の戦略強化を報じ、伯中同盟は「つまずきの石」であることを強調した。
外国紙の論評は、ブラジルが独自開発したウランの濃縮技術が、中国へ移転される可能性を巡っている。たとえ現実性に乏しくても、中国は核弾頭保有国であり、非保有国のブラジルが中国へ核で接近することを米政府は懸念している。
核に関する最先端技術が、中国以外の国からブラジルへ流入する可能性も否定できないと、疑心暗鬼は増幅された。中国はすでに、パキスタンへ核弾頭の製造技術を供与した。西側諸国からも専門家が同国へ滞在し、核拡散は進行している。
駐伯する米武官が懸念するのは、ブラジルの外交政策への重大な影響。両国の式典の席で歓迎色に塗りつぶされたとはいえ、かかる微妙な核問題を持ち出すのは不注意だと批判した。
ブラジルのウラン輸出は、核物質についてズブの素人閣僚が調子に乗って口を滑らせた話らしい。不十分な説明と意外な反響で関係者が戸惑ったが、ブラジル政府の本音について無益な疑惑を生んだようだ。
レゼンデのウラン濃縮施設に対するIAEA(国際原子力委員会)の査察についても、ブラジル政府の査察拒否発言が物議をかもした。これも政府の軽率な発言と、外国からはみられている。