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中国へウラン輸出を検討=原発建設資金に=原子力協定も視野に=新たな国際問題へ発展か

5月27日(木)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十六日】伯中両国は二十五日、ブラジルの原子力開発の技術協力と中国の原子力発電所へのウラン鉱石供給協定について検討に入った。目的の一つは、ブラジルの原発建設の資金捻出とされる。ブラジルが中国へ供給するウランは、平和利用または軍事利用にしても未加工の状態。伯中原子力協定の内容について、ブラジルが中国へ供給するウランを第三国へ横流しされないかと、米政府は神経を尖らせている。

 両国の原子力協定はカンポス科学技術相の提案を、中国側原子力担当の高官が受け入れたもの。中国は八月に関係者をブラジルへ派遣し、詳細を打ち合わせることにした。双方は、それぞれの理由で同協定の具体化を急いでいるようだ。
 政府はこれまで、ウランの商業ベースでの輸出政策がなかったため、三カ月以内に結論を出す必要がある。伯中間で動き出した原子力協定でルーラ政権は、核をめぐって外圧を生み出すことになりそうだ。
 政府は四月にリオ州レゼンデ市のウラン濃縮施設に対する国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否した経緯がある。海軍が独自の技術で平和利用のために開発した濃縮施設であり、誰にも設備の公開はできないと声明を発表した。IAEAの査察を義務付けられる核不拡散条約にも、ブラジルは加盟を強く求められるかも知れない。
 両国の原子力協定では、ブラジルの原発建設計画に中国が資金援助を行う。同資金援助はさらに発展し、海底油田開発やウラン鉱石の採掘計画にも中国は協力する。政府はこれまでに、原子力開発に十億ドルを投じたが、さらに十五億ドルの予算が必要だ。
 アングラ第三原発と原子力潜水艦建造計画は、資金不足で頓挫している。またブラジルはウランを自国で実用化する段階には、まだ至っていない。政府はアジア地域に建設中の原子力発電所十一カ所へ、ウランの全量供給を計画している。中国にとってもエネルギー不足は、経済発展の深刻なネックとなっている。
 ブラジルは豊富なウラン鉱石を埋蔵し、発見されているのは三〇%、ウランの供給能力は世界第三位とみられている。原油の暴騰によるエネルギー危機で世界の関心は、再び原子力発電に集まっている。
 しかし、米国を中心とする先進諸国が、伯中原子力協定の成り行きを警戒している。ブラジルが供給する核燃料が、中国経由で核弾頭を保有していないアジア諸国へ、平和利用の名目で流れる可能性があるからだ。
 中国は、すでに核弾頭や製造技術も持っている。ブラジル産のウランが広範囲に出回るなら、平和利用といっても通用しなくなる。今回の伯中戦略協定は、中国を中心とする新ブロックが形成されつつあることで世界を震撼させた。これは南米の問題に止まらず、南アフリカや中東にも新しい流れを生み出している。
 米国はイラク問題やテロ問題、パレスチナ問題に気を取られ、足元の南米を疎かにした。米国が気づいたときは、中国が南米に深入し米国の喉元に迫っていた。伯中原子力協定に、米国は干渉するとみられる。ブラジルはこの機会に、核弾頭の製造技術を習得する狙いがあると諸外国はみている。

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