ホーム | 日系社会ニュース | 6年ぶりの〃凱旋〃帰国=大相撲夏場所三段目を制した東旺=手土産は全勝優勝=「粘りの相撲で十両目指す」

6年ぶりの〃凱旋〃帰国=大相撲夏場所三段目を制した東旺=手土産は全勝優勝=「粘りの相撲で十両目指す」

5月26日(水)

 先の大相撲夏場所三段目で全勝優勝したブラジル出身の東旺(本名・森田泰人マルシオ)が二十五日早朝、サンパウロに凱旋帰国した。母国の土を踏み締めるのは六年ぶり。あいさつに来社した東旺は「三月に玉ノ井親方から帰国許可をもらっていた。まさか優勝を手土産に出来るとは思ってもみなかった。本当に夢みたい」と喜びを語った。

 開口一番、優勝した日、初めて親方から有名な寿司屋に誘われたときのことを思い出す。「後にも先にも、あんな旨い大トロを食べたのは初めて。それに親方のあんな嬉しそうな顔を見たこともなかった」
 三段目には東西合わせて二百人の力士がいる。その頂点に立った。次は幕下力士百二十人のトップを目指す。東旺と一緒に来社した元若東の黒田吉信さんは「自分は優勝した経験がないので羨ましいし、凄いことをやった」と同期の快挙を盛んに褒めた。
 現在二十六歳。出世が遅れた理由について東旺は、「ブラジルでは体が大きかったのでいつも胸で相手を止めていた。だが、大相撲の世界では小柄な方なので、一気にもっていかれる。長年ついた癖を直すのに時間がかかった」としながらも、「幕下に昇進すると大関の栃東関に稽古をつけて貰えるので、今までのようなことはない」と言い切った。
 だが、不安もある。「四年前から患っている痛風のため、肉があんまり食べられないので、体重が増えない」とこぼす。
 父親の泰司さんは、「お陰で大きなけがもなく、ここまでやってこられた。休場したのは、ふくらはぎの肉離れをおこした時だけで、十年間でたったの三日間」。今回の優勝は「ラッキーだったのじゃないか。十年間も外国でがんばってきた努力に、神様が与えてくれた大きなプレゼント」と、久しぶりに対面した息子の脇で目を細める。
 東旺がかつて所属していたサンパウロ相撲愛好会の佐藤博孝会長は、「百周年祭の記念行事として、大相撲が来てくれたらこんな嬉しいことはない。そのためにも東旺さんに頑張ってもらって、関取になってほしい」と期待を込める。
 「早く母さんの鳥マヨネーズ焼きが食べたい。それとパステル、シュラスコにフェジョアーダも」と故郷の味を懐かしむ東旺だが、日本での生活も気に入っている様子。
 「モンゴル出身の関取である白鵬や露鵬と仲良くさせてもらっている。部屋の力士ともうまくいってるので、エンジョイしている」と話す。
 今後の抱負はとの質問には、「兄弟子から貰った博多帯やコートを大事にしまってある。幕下に昇進する来月から、身につけることができるので嬉しい。ここまできたら筋肉、スタミナと体重をつけて、親方の現役時代の相撲のように、食らいついたら離さない粘り強い相撲を磨き、十両に上がりたい。応援してください」。
 東旺の祝勝会を二十九日午後二時から、ボン・レチーロ常設土俵場で開催される。シュラスコを作る。会費は二十レアル。問い合わせは電話11・3277・9124(愛好会)。