再脚光を浴びる結婚式=式のスタイル、多様化=同棲中の男女も〝区切り〟=低所得層には無縁
5月22日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五月十六日】五月といえばブラジルの花嫁の月。同国の結婚式のほとんどは教会で行われる。式後は新郎新婦のアルバム写真撮影、披露宴という順序で進められるが、「結婚式は神前の誓いから披露宴まで」という考え方が一般的だ。近年ブラジルでは「伝統的な結婚式はそのうちなくなる」とまで言われるほど、結婚式の件数が過去六年間にわたって減りつづけていた。だが大サンパウロ圏聖庁の調査によって、再び結婚式の開催が流行り出してきたことが明らかになった。
同聖庁の調査によれば、二〇〇二年に大サンパウロ圏で行われた結婚式件数は一万千二百二十七件。昨年は一万千三百六十一件で、わずか一%ながらも増加した。だが、わずか百件余りの差で「結婚式が増加傾向にある」というのはどういうわけだろうか?
増加傾向の理由の一つとして挙げられているのは、結婚式の開催スタイルの変化である。スタイリストのフラーヴィア・ガーリさんは、「結婚式は、それぞれの好みと金銭状況に合わせた大パーティーと化している。海岸で結婚する人もいれば、オテル=ファゼンダ(農場を宿泊施設に改造したもの。ファームホテル)で挙式する人もいる」と説明する。
最近では披露宴を、翌朝まで続く大規模なダンスパーティーにして大いに楽しむカップルが増えている。「花嫁自身も一晩中踊り明かせるよう、着心地の良いウェディングドレスやシューズを好んで選ぶ傾向がある」とガーリさんは指摘する。
興味深いのは、すでに同棲中の男女が改めて結婚していることである。以前なら、「同棲も結婚も同じことだ」と結婚を敬遠していたはずだが、なぜ?
リオデジャネイロ・カトリック大学(PUC―RS)心理学部のアドリアーナ・ヴァギネル教授は、結婚式のような儀式がないと人生に何か欠けているような気になる人が多く、そのような感覚は人間ならではの心のけじめから来るという。
「人生の中でそれぞれの時期に区切りを付けていくのは人間の習性とも言うべき基本的なこと。多くの男女が同棲し、夫婦のように振舞ってはいるが、実際には『自分らは夫婦である』と認識しているケースは少ない。いつ〃結婚〃したのか尋ねても、正しい日付を答えられない男女が圧倒的」、と同教授は語る。
未来の花嫁に無料コンサルタントを実施しているカーザ・グルメ・アルノ社のアドリアーナ・V・メレジェさんは、「現在、人々は再び結婚式を求めている。夫婦として正式にお披露目をすることで、絆が強くなると感じている」と最近の結婚式増加傾向を肯定した。
昨年、技師のダニーロ・プラーザさんと結婚したばかりの建築家ニーナ・ドミンゲスさんは、「わたしの友人には同棲している人が大勢いる。でも、彼がただのボーイフレンドなのか、自分の夫なのか、いまだに分からない人が多い」と指摘。「子供の頃に結婚を夢見たことはなかったけれど、人生の区切りとして挙式するのはいいと思った」。
ちなみにニーナさんの両親は同棲三十年になるが、結婚しようとはしなかった。「祖父は当時、披露宴費を払うとまで言ってくれたけれど、母は『そんなことに使うなんてお金がもったいない』と反対してやらなかったわ」。
ただ、挙式したいと考える人が増えているのは上中流階層のみ。「これらの階層の若者たちは、昔の若者たちより儀式を重要だと考えているようだ。一方、低所得層の人々は毎日の生活に精一杯で、結婚式にお金をかける余地もない」と付け加えるのは、応用経済研究員(IPEA)人口・家族部のアナ・アメーリア・カマラーノさん。ブラジル地理統計院(IBGE)の調査では、一九九一年から二〇〇二年までに国内の婚姻届数は、四%減少(七十四万三千四百十六件から七十一万五千百六十六件)しており、カマラーノさんの指摘を裏付けている。
ヴァギネルさんは、「過去に結婚がくだらないものだとバッシングした中流階層自身が、結婚の概念を新たに掘り出し、改良を加えている。一九七〇年代の離婚法施行以来、家族は崩壊の道にあると言われてきたが、さまざまな生き方が試され、めぐり巡って結婚などの儀式が再浮上してきたのだ」と説明している。