5月22日(土)
〇三年十一月。旧日本語普及センターは臨時総会を開き、名称をブラジル日本語センターに変更した。
全伯各地に存在する日本語教育団体と差別化。事業内容について、一般にもイメージを沸きやすくさせるのが大きな目的だった。
ブラジル、延いては南米の中心的な機関に成長する―。改称には、そんな意思も込められた。
関係者たちは「日本語のことなら、何でも相談してください。各種の情報を提供します」とアピールする。
JICAが今年四月、同センターと全国十八のモデル校(地方の拠点校)にパソコンを寄贈。ネットワークづくりの基盤が整備された。
同センターは既に、コンピューターを活用。研修やイベントの日程や内容に関する情報発信をどんどん、推進させているという。
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地方の有力者は日本語センターの動きについて、どうみているのだろうか。
「私たちの都市でも一世は老いていっており、後継者の育成は急務。サンパウロの成長を待っている余裕はない。地方もともに、伸びていく方法を考えなければなりません」
ブラジリア日本語普及協会の三分一貴美子理事長は、厳しい注文をつける。同理事長の持論はこうだ。
研修のため、サンパウロに教師を集めることは時間的にも金銭的にも難しい。各地で事情も違う。だから、拠点となる学校が現地で若手を養成。地方の指導者になるべき人材を、中央が育てるのが効率的である。
ベレーン・ノーボムンド日伯学園の越知恭子学園長も三分一理事長に賛同。「リーダー研修をぜひ、実施してもらいたいですね」と望む。
さらに、「サンパウロで行われる全伯規模の研修に、各地の優秀な教師を講師として活用してもよいのではないか。企画段階で地方の意見も聞いてほしい」とも。
地方への支援について、谷広海ブラジル日本語センター理事長は「専門家を増やして、地方でも研修を実施できるようにしたい。イベントなんかの手伝いも考慮に入れています」と青写真を持つ。
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研究部門の充実──。
センターが中心的な役割を担うに当たっての大きな課題だろう。
「海外には、百年の歴史を持つ日本語教育が存在する。しかし、蓄積されたものが何もない」とずばり指摘する大学教授もいる。
例えば、生徒が集まる(集まらない)学校に出向いて、原因などを分析。結果をほかの学校に応用する。
これまで、移民社会の日本語教育を客観的に捉えるようなアプローチの仕方は、あまりされてこなかった。人材不足もあって、目の前の仕事をこなすのに、精一杯だったからだ。
JICAサンパウロ支所の小松雹玄支所長は「現場の取り組みについて、理論的な支えを与えるのが、センターの仕事だと思う」と専門家の養成を促す。
今年六月にJICA派遣のシニアボランティアが二人、センターに配属されることが内定した。活動中の青年二人を含めて、一団体にボランティアが四人集中することになり、極めて異例な状況だ。
背景には、研究センターとして機能させていきたいとの思惑がある。
中南米の中心機関になるという大きな目標に向かって第一歩を印したブラジル日本語センター。多くの個人・団体の期待に応えられるのか、正念場を迎えていると言っても過言ではない。つづく。(古杉征己記者)