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アテネで飛べ帰化2世=男子バレー五輪最終予選=杉山「日本助ける」

5月22日(土)

 アテネ五輪目指す男子バレーの秘密兵器――。二十二日から始まるアテネ五輪最終予選に出場する男子バレーボール日本代表に一人の日系人がいる。ブラジル人の父と日本人の母を持つ日系二世の杉山マルコス(三〇)だ。ブラジルや世界最高峰として知られるイタリアなどで活躍してきた杉山は昨年九月、「日の丸」を目指し、日本国籍を取得。低迷が続く男子バレーを救おうと代表入りを目指してきた。今年二月に初の代表入りを勝ち取った杉山は、バレー界では小柄な一八三センチの身長だが、「超人的」とまで言われる跳躍力が武器。九二年バルセロナ大会以来の出場を勝ち取る原動力として期待が高まる。(下薗昌記記者)

 杉山はサンパウロ州サントアンドレー市出身で、本名はマルコス・アウメイダ・エステーヴェス。
 八歳からバレーを始め、世界一レベルが高いと言われるイタリア「セリエA」でも活躍、南米の国際大会でもベストレシーブ賞を得てきた。
 二メートル級の選手が標準の男子バレーでは小柄だが、黒人のサッカー選手だった父の身体的能力を受け継いだ杉山は、凄まじいジャンプ力で観衆を魅了。二〇〇二年にVリーグ、堺ブレイザーズ入り後、エースとして活躍してきた。加入直後の天皇杯では十三年ぶりにチームを決勝に導くなど、その能力の高さを関係者に見せつけた。
 「最初は、サウダーデ(郷愁)や寒さに悩まされた」と振り返る杉山だが、母の生まれ故郷への適応は早かった。アキレス腱の負傷などで、デビューは遅れたが「生活レベルの高さや文化などが気に入っている」とすっかり「日本人」としての顔を見せる。
 アタッカーとしての決定力やレシーブなど幅広い能力に代表チームの田中幹保監督は「一目惚れ」。帰化申請直後から、代表入りを約束していたという。
 代表入りの障壁だった二年以上の居住歴についても、国際バレーボール協会(FIVB)が杉山にブラジル代表歴がないことなどを理由に特例として許可。今年二月、初めて代表に選ばれた杉山は「ナショナルチーム入りは夢。本当にうれしい」と喜びを見せた。
 二十二日から始まる最終予選はイタリアやロシア、韓国などの強豪を含む八ヶ国が狭い出場枠を争う。先日、出場権を得た男子サッカーの闘莉王同様、ブラジルからやってきたもう一人の「サムライ」に対する期待は高まる一方だ。代表チームの仲間も「苦しい試合でも、楽しんでプレーする男」と杉山が持つラテンならではの明るさを頼もしく感じている。
 「僕の役割は日本を手助けすること」と言い切る杉山。闘莉王に続くもう一人の日系人が、アテネへの道を切り開く。