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貧困層で50歳以上の女性=半数以上は歯ナシ=歯のないブラジル人2千6百万人=「さっさと抜いてくれ」=歯の健康への意識低く

5月20日(木)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十九日】オスヴァウド・クルス財団(FIOCRUZ)は十八日、世界保健機関(WHO)に提出するために昨年五千人を対象に実施した「世界保健調査」を発表した。同調査によると、ブラジル国民の一四・四%が永久歯をすべて失った状態だという。ブラジル地理統計院(IBGE)の調査によれば、ブラジルの人口は現在約一億七千九百万人。よって、約二千六百万人の永久歯が全部抜けてしまったことになる。国民の歯の健康状態に貧富の差が表れていることも、今回の調査結果の特徴である。
 各階層を比較してみると、貧困層で歯のない人の割合は一七・五%に達しているが、富裕層では五・九%に留まっている。
 FIOCRUZは、テレビや冷蔵庫などの電化製品を含む消費資産をどれだけ所有しているかを調べ、それぞれの社会階層に振り分けた。最も歯の健康管理が保たれていないのは貧困層の五十歳以上の女性で、その半数以上(五五・九%)が永久歯をすべて失っている。
 FIOCRUZの調査員で、同調査の指導を担当したセーリア・L・Szwarcwaldさんは、「ブラジルの公共保健システムが歯の健康管理に取り組み始めたのはつい最近のことで、国民―特に貧困層の人々―は、虫歯予防の必要性など歯の健康に対する意識が非常に低い」と説明している。
 セアラー州地方都市や州都フォルタレーザで歯科治療を施しているアドリアーノ・M・ロッペス歯科医は、患者の歯の健康管理に関する知識がとても乏しいと話す。「特に地方都市に住む三十歳以上の一般市民は、歯の治療など必要ないと思い込んでいる。虫歯があると、『さっさと抜いてくれ』と患者の方から頼んでくる。歯の治療なんて馬鹿げていると考えているのだ」。
 サンパウロ市でも、歯の治療をせずに抜いてしまう人は少なくない。年金生活者のアントニオ・B・シウヴァさん(七三)は、いつ頃入れ歯を使い始めたかを忘れてしまったほど。「とても痛くて、そのうちぐらついてきたから、自分で引っこ抜いた」。
 そうして一個ずつ引き抜いていき、気がついた時にはほとんど歯がなかった。歯医者に行ったのは三度だけ。二度目に受診した時に入れ歯をつけた。「入れ歯になかなか慣れなくて大変だった。家内が見かねて入れ歯を捨ててしまったよ」。
 だが、食事の時の苦労に耐えかねて、三度目の歯科検診へ。「新しい入れ歯には何とか慣れた。でも、もう交換する時期だ。お金があれば換えるよ」と、入れ歯を外して笑顔を見せた。
 連邦政府は三月、歯の健康管理キャンペーンである「笑顔のブラジル」プログラムに、十二億レアルの予算を回すと発表していた。