4月21日(水)
自助努力と現実的な計画が実現の鍵ーー。五月初旬に約二年の任期を終え、日本に帰国する池田維(ただし)ブラジル大使が十五日、サンパウロ総領事館で記者会見し、日系社会に対する思いや移民百周年の記念事業についての見解、展望などを語った。このほど祭典百周年委員会がメイン事業として承認した「日伯総合センター」についても、池田大使は日伯関係の重要性は認めながらも「あまり楽観的に考えられても困る」と資金的な裏付けが乏しい同センターを牽制。一般論と前置きしながらも「箱物への支援は難しいのでは。現地の自助努力がまずは不可欠だ」とコロニア側での資金集めの必要性を指摘した。 (リード)
東京大学卒業後、一九六二年に外務省入りした池田大使は、アジア局長、オランダ大使などを経て二〇〇二年六月にブラジリア大使として着任。五月上旬の帰国を前に、十五日にはサンパウロ市入りし商工会議所関係者や日系諸団体に挨拶。同日午後から記者会見を実施した。
サンパウロやパラナ、リオデジャネイロなど各地の日系団体から百周年に向けた事業計画が出されていることについて池田大使は「出来る範囲で協力したい。具体的には外務省内部で検討中」だと言及するにとどまった。
ただ、百周年祭典協会が最優先する同センターについては「こちらの日系社会が記念となる物を造ろうというのは分かる。ただ、基本的にはサンパウロ側の自助努力は欠かせない」と強調。あくまでも一般論としながらも、日本政府からのブラジルに対するODAなどの資金援助は環境整備や教育、人材育成などの分野に限られている、として「箱物」への援助は難しいとの見方を示した。
また、約七十億の予算のうち半額の三十五億円を日本政府に求めている現状についても、「ブラジルで無償援助の上限は一億円。ODAの枠では難しい」と明言した。一方で、日本政府がフランスに建設した日本文化センターのようにODAの枠を超えた資金援助の可能性については否定しなかった。
百周年の基本的な考え方として池田大使は「百年のつながりは非常に重要。単に過去を振り返るだけでなく、二十年、五十年先を考えた事業が不可欠」との見解を示した上で「そういう意味で本当に日伯総合センターやパラナの計画が必要なのか。あまり楽観的に考えられても困る」と指摘。各地の日系社会で計画が林立する現状に「日系社会の総意で、現実的に可能性がある計画を早急に絞るべき」と語った。この日の会見で池田大使は「現実的な案が不可欠」との言葉を幾度となく口にした。裏を返せば、巨額な資金を要する同センターに対する疑問とも受け取れる。
前任地のオランダで、交流四百周年の節目に立ち会った池田大使は、現段階で祭典協会が日本政府に正式な打診をしていない現状にも警笛を鳴らす。「現実的なプランを早急に政府にぶつけて、今後の折衝を進める必要がある」
約二年間の任期で印象的だった事柄として池田大使は「ルーラ政権樹立という節目の前後に立ち会えたこと」と語った。また、世界最大の日系社会についても「数字の上では分かっていたが、改めてこの国でのたくましく存在を目の当たりにした。今後も日伯間の架け橋として活躍してもらいたい」と言及した。
池田大使は五月上旬に帰国する。