4月6日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】伯米間が、安全保障条約と核兵器不拡散条約(NPT)を巡って緊張している。国際原子力条約機関(IAEA)の核査察とブラジル側の見解が大きく異なるため核査察協定には応じられないと、ブラジル政府は四日、米政府の要求を拒否した。リオデジャネイロ州レゼンデ市の核融合施設へのIAEAの訪問を、政府は拒絶。外務省はブラジルが北朝鮮と同列に取り扱われたことに痛く心証を害したと発表している。
濃縮ウランの取り扱いについて、純然たる平和利用を目的とするブラジルと軍事目的が瞭然としている北朝鮮と同列扱いにされたことで、伯米間は大きな隔たりをみせた。伯米間は安全保障問題を巡って、座礁に乗り上げたようだ。
ブラジルが軽度の濃縮ウラン輸出に踏み切るのに先立ち、米政府はIAEAの査察協定に調印するよう要求した。協定は核融合施設の核心部分も含めて、IAEAの抜き打ち検査に応じるというもの。政府は核融合技術の国家機密に属する部分は、公開できないとして要求を拒絶した。
米政府の要求には、大統領選に向けて米覇権国の拡大を試みる、点数稼ぎもあるとみられる。ブッシュ米大統領は二日、米上院へNPT改定案を提出。駐米ロベルト・アブデヌールブラジル新大使は、NPT改定案が米国を始め日本や韓国と核融合技術の共有を求めているが、ブラジルはそれを拒否すると述べた。
ブラジルの核技術は遅れている。ようやく独自の技術で軽度の濃縮ウラン摘出に成功した段階だ。予算不足のブラジルは、核保有国の仲間入りが高くつく。ブラジルは豊富な核資源を有し、核燃料の輸出へ踏み出す計画を検討している。
ロベルト・アマラル前科学技術相が新政権発足当時、ブラジルも原爆製造に乗り出すと発表し、世界の有名紙がそれを報道したため無用の混乱が起きた。それ以後ルーラ政権の核計画に、ブッシュ米政権が関心を持つに至った。これが北朝鮮並みに扱われた原因と、ブラジル大使はみている。
ブラジルは核生産国入りしても善良なお坊ちゃんであって、世界の不良少年の仲間に入れて欲しくないという。核不拡散条約の調印には、検討する時間が必要で、連邦令には核の平和利用と原爆の非保有が明記されており、伯亜条約もあると同大使は説明した。
NPT改定案は、核に関する協定を締結していない国への核融合技術の提供を禁じている。イスラエルとインド、パキスタンには暗黙の了解があり、この枠にブラジルが入らないことに政府は違和感を抱いている。
レゼンデ市の核施設へのIAEA査察に、政府はセーフガード(緊急制限)方式を適用する考えだ。ブラジルが独自開発した超高速遠心分離機は、国際条約の権利擁護に基づき、誰にも見せないと同大使は述べた。
一方、米政府は十二日、高官をブラジルに派遣し、両政府の見解について協議する予定。NPT担当のジョオン・S・ウオルフ長官を団長とする一行とエネルギー担当のスペンサー・アブラハム長官の一行も来伯する。NPTへのブラジル参加の意義について米大統領の覚書も手渡される。