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米人夫妻殺害事件 容疑者を偶然逮捕=隣家の使用人が自供=差別発言に怒り、復讐 リオ

4月3日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙二日】昨年十一月三十日にリオデジャネイロ市西部で起きた石油会社『シェル』の米国人重役夫妻殺害事件で、リオ州警察は一日、四カ月間にわたる不毛の捜査の末、偶然にも容疑者を逮捕した。動機は「復讐」だと容疑者は自供している。
 被害者のトッド・ステーリーさんは、同市バーラ・ダ・チジュカ区のコンドミニアム『ポルト・ドス・カブリットス』にある自宅で、刃物で刺されて殺害された。同じ部屋で寝ていた妻のミッシェルさんも頭部に重傷を負い、四日後に死亡した。
 盗難被害はなく、ドアがこじ開けられたような形跡もなかったことから、ブラジルでは珍しい密室殺人事件として報道された。二人ともブラジルに来てまだ三カ月半だったことも、捜査を難航させていた。
 逮捕されたジョシエル・C・サントス容疑者(二〇)は、被害者宅の隣家で三年前から働いていたカゼイロ(使用人)で、一日午前四時ごろ、同じコンドミニオに住む在リオ市ギリシャ領事宅に侵入しようとして逮捕された。同容疑者は第十六警察署に連行され、ステーリー夫妻殺害を自供した。
 リオ州保安局のアントニー・ガロチーニョ長官は、自ら警察署へ出向いて容疑者の取り調べを始めた。同長官の問いに対し、サントス容疑者は「はい。わたしがやりました」と素直に返答した。
 サントス容疑者は、犯行動機を「復讐」だと供述している。「一家が引っ越してきた時、自分は彼らの家と屋根続きになっている隣りの家の貯水槽を洗っていた。すると彼(トッド氏)が妻を連れてきて、『うちの屋根の上に〃クリオウロ〃がいるのは不愉快だ』と言ったんだ」。
 クリオウロとは、黒人を指す差別語。トッド氏が流暢なポルトガル語を使ってそう述べた後、夫妻の四人の子供たちが笑い出し、サントス容疑者は「憎悪にかられた」という。凶器は勤務先の家にあったくぎ抜き。ただ仕返ししたい一心で犯行に及んだため、物を盗むことなど頭になかったとも供述している。
 同容疑者は事件当日午前一時三十分ごろ、ステーリー宅の塀に上り、テレビを見ていた夫妻が寝付くのを待った。同二時三十分ごろ、ノブを確かめると、台所の扉が開いた。家の内部の様子は、以前同家で働いたことのある従業員から聞いていた。
 夫妻の部屋に入ると、サントス容疑者は先にトッド氏を殴った。最初の一発で後悔してそのまま帰ろうとしたが、起きたミッシェルさんに姿を見られたので、彼女も殴ったと自供している。
 警察側は、サントス容疑者の自供内容を疑問視しており、「本当は強盗に入るつもりだったが、夫妻が起きたので殺したのではないか」とみている。また、家の内部に詳しい元従業員も共犯の可能性があるため捜査を続行する。