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コラム 樹海

  早場米の産地・千葉県の鴨川市では一日に田植えが始まったそうだ。東北で生まれ育ち農作業もひと通りは経験したけれども、五月になると農家の人たちは、猫の手をも借りたいような忙しさになり田植えを迎えたように覚えている。代掻(しろかき)といい牛や馬を使い田の土をきちんとする作業があり、子供らは牛や馬の「鼻取り」が仕事であったのも今は懐かしい▼と、これはもう五十数年も昔の話だが、今は田植機が五本も十本もの苗を植え込んでいくし汗と暑さで苦労した稲の草取りも機械化されており、農家の仕事もすっかり変わってしまった。戦後の直ぐには小学校でも「農繁休暇」というのがあり、確か―五月に二週間ほどの休みがあって、子供たちも田圃に駆けつけて手伝う「働き人」でもあったのだ▼あの頃は食べるコメが不足し朝昼晩の食事に「白い米」を食べるのが夢のまた夢である。サツマイモで腹を満たすのはいい方で蔓までをも食料とし日々を耐え忍び戦後の復興を成し遂げようと頑張った。農家は農家で一所懸命だし「一粒の米」を大切にし豊作を祈りもした。そんな辛苦を忘れたのか今の日本は「米余り」が続いて減反が当たり前の不思議さだ▼それでも余剰米は増える。そこで考えだされたのが、古くなったコメで「生分解性プラスチック」をつくるのだそうな。輸入米も一〇〇万トンほど余り、これもプラスチックに化けるそうだが、もう少し何かいい方法がありそうな気もするし、折角の田植えの祝い気分もちょっぴり元気を失いそうだ。(遯)

04/04/03