3月31日(木)
[那覇]来沖中の赤嶺光弘ペルー沖縄県人会会長は、去る二月二十八日、真和志署に消防士の上間尚義さんを訪ね、感謝状と記念品を贈って驚かせた。これは、一昨年(〇二年度)県費留学生として、県立芸大で三味線を学んでいたアンヘル謝敷さん(与那原系三世)が芸大での講義終了後、さらに技術を学ぶため、浦添の前川朝文古典音楽研究所へ通うときの送迎や、古典芸能コンクールに応募した際、着物を貸すなどサポートしたことに対し贈られたもの。
突然のことに驚きと感激で言葉をつまらせながら、上間さんは「実は、私も前川先生のところで三味線を学んでいる。兄弟弟子に対し、当然のことをしたまで。アンヘル君の伝統芸能を継承したいという熱意には感心した。逆にこちらが励まされているように感じる。伝統芸能を通してペルーと交流していきたい」と語った。
これに対し、赤嶺会長は「上間さんは現在、芸大で学んでいるエクトル伊芸君に対しても同様のサポートを行っている。日本語もよく話せず、地理もわからない三世にとって、上間さんのサポートはどんなにかありがたく、心強かったかと思う。おかげで二人共新人賞をとることができた。今年は仲田ひとし君(宜野座系三世)がくることになっている。よろしくお願いします」と述べた。
赤嶺会長によると、地謡は一世がやっているが、平均年齢は八十歳。後継者の養成が急務の状況である。アンヘル君は芸大終了後も残り、三味線の作り方を学んで帰国した。「一世は移民するとき必ず三味線を持参した。一世は老齢化し、弾き手もないまま放置され、壊れたままになっている三味線がたくさんあった。それらをアンヘル君が修理し、よみがえらせている。アンヘル君は地謡としても活躍しており、県費留学の成果は現れている。県人会として、伝統芸能の継承はもっとも重要な事業として位置付けており、力をいれていきたい」と熱っぽく語った。(照屋聡子フリーリポーター通信)