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正念場を迎えたルーラ政権=ジニス氏疑惑が〃引き金〃

3月18日(木)

 【ヴェージャ誌】政治分析を専門とする歴史学者のボリス・ファウスト氏に、ジニス氏疑惑とその影響について語ってもらった。
 【ルーラ政権が迎えた最初の試練を、どう見るか】スタートは前政権路線を踏襲して、国際社会を安堵させた。しかし、後半から路線を変更した。PTの目玉商品であった社会保障部門は、放置状態。それにジニス不祥事ときた。PT政権の政治工作に、たがが嵌められたのは明白だ。
 ジルセウ官房長官の立場弱体化は、野党にスキを与えただけでなく、専制手法で党内や連立党からもひんしゅくを買った。大統領は低所得層の潜在的支持を得て、象徴的存在となった。しかし、今後の戦略や効果的決め手はないようだ。
 【PTの看板「清廉」と不祥事は】PTは、不祥事を甘くみていた。露見すると握り潰しにかかった。この政治手法は、お粗末というしかない。政治的倫理観でPTはうぬぼれていた。いまは、そのツケを払っている。これまでの政権のような汚職体質はPTにないが、有権者への裏切りは過激行動で跳ね返ってくる。例えば、農場占拠運動(MST)の反応だ。
 【ルーラ信仰と人気】ポルトガルを悲惨のどん底から救ったセバスチオン王のような低所得層の淡い期待が、ルーラ大統領に対してある。過去の栄光は過去のもの。亜国は、十九世紀の黄金時代から抜け出せない。政治家には、過去の栄光に溺れる者が多い。未来の栄光は、現実を直視することから始まる。それは苦杯で、不如意なもの。
 【現政権と大衆迎合主義】代表的な大衆迎合主義はジェットゥリオ・ヴァルガス政権と亜国のペロン政権のそれであったが、時代の変遷とともにその主義は終わった。ルーラ大統領の大衆迎合は直接国民に訴えるものではなく、景気回復の景観を約束したり、MSTの帽子を被ってみたり、庶民の言葉で語るジェスチュア程度の軽いもの。
 【ルーラ政権の外交評価】インドや南アフリカなどを統合した途上国連合の組織化は、地政学を知らない人の蛮勇で国際外交を誤解している部分がある。中東訪問は誤算。ラテン・アメリカの盟主気取りは、出しゃばり過ぎ。ベネズエラ問題への介入は、幻想の域。いつも南米の人権問題を叫ぶ大統領が、キューバでは見ない振りをした。