3月13日(土 )
十八年間、ごくろうさま――。ノロエステ連合日伯文化協会の〃万年会長〃を務めてきた五十嵐二郎さん(七十四歳、二世)が、今期限りで引退を表明している。「どんなことを言われても、止めようと決心している」と決意の固さを記者に語った。同連合会傘下には三十もの日本人会や文協があり、ほとんどが必ず総会に参加する。結束の堅い連合会として有名だ。
五十嵐会長は四年前に、ペナポリスであった盆踊りの時に脳溢血で立てなくなった。「最初は手、足が動かなかったから、ご飯を食べるのにも困った」が、半年ほど療養生活をするうちに快方へ向かった。
「でも、二十年も前からよく知っている人の名前が突然思い出せなくなったりするようになったから、もう会長を辞めるときだと思ってる」としみじみ語った。
「一番恐ろしいのは、今年四十六年目になる伝統が続かなくなること」。例えば、毎年四千人もが集まり、ブラジル最大級とも言われる連合会の盆踊りは「アミザーデを作ること、親睦が第一。お金儲け中心になってしまったら、本来の良さがなくなってしまい、だんだん、みんなの足が遠のくようになる」と警笛を鳴らす。「ご馳走食べて、楽しく踊って、愉快に話して、来年もまた来よう、という盆踊りであってほしい」。
その他、農事研究会、シンポジウム、懇談会など、連合会は重要な行事を抱えている。
「ノロエステは日本移民の発祥の地。ここからサンパウロ、パウリスタ線や北パラナにも旅立っていった人は多い。いわば〃ノロエステ出身者〃だ。日本人的な考え方を一番残している場所です。だから百周年記念事業もぜひここでやってほしい」とその重要性をアピール。「総会の出席者だって九割以上が二、三世だが、ほとんど日本語でやる。ちょっと他にはない。それがノロエステ」と強調する。
「新会長が選ばれたら、半年でも一年でも軌道に乗るまで手伝うよ。後継者を作ることは、一番大切なことだから。後継者作らないと、いずれ倒れることになる」と前会長の例を出す。やはり十五年間務めてきた佐藤忠四郎会長は突然倒れ、亡くなった。当時、副会長だった五十嵐さんが会長職を引き継ぎ、以来十八年が経過した。
実は五十嵐会長は十年も前から辞職を言い続けているが、なかなか周りが納得せず、懇願される中、辞めるに辞められずにきた。「今度こそは、大きな紙に辞職と書いて総会で出そうか」と冗談を飛ばし、呵呵(かか)と豪快に笑った。