3月10日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙九日】連邦警察(連警)は七日、粉ミルクを偽造していた犯罪組織のメンバーとみられる十四人を逮捕した。また、偽造粉ミルク百十トンと偽造ラベル三万枚、銃器二丁を押収した。逮捕された容疑者のうち、一人は連警警官だった。同組織はブラジル北東部四州で暗躍し、本物の乳酸品メーカーのラベルを偽造してスーパーマーケットで販売していた。偽造粉ミルクには、水酸化ナトリウム(別名、苛性ソーダ。化学式NaOH)が含まれていた可能性があるという。
同組織のリーダーはアントニオ・C・M・アウヴェス容疑者(通称トニーニョ)。十四人は、犯罪組織形成、食料品偽造、汚職の容疑で逮捕された。連警警官には脅迫の容疑もかけられている。
粉ミルク偽造組織の捜査は二〇〇三年四月に始まった。ある乳製品メーカーが、複数の消費者から食中毒訴訟を起されて困っているという告発があり、商品を調べたところ、粉ミルクが偽造されていたことが判明した。
連警は〃ソーロ(乳清)作戦〃を開始し、同組織がセルジッペ州、バイア州、ペルナンブーコ州、セアラー州の四州で活動していたことを突き止めた。また、サンパウロ州、リオ州、マラニョン州、エスピリト・サント州、ミナス州の五州に事務所を設けていたことも捜査で明らかになった。
偽造製品は、四州の地方都市にある違法乳製品工場で製造されており、牛乳らしい濃度にするためマルトデキシトリンや乳清を過量に加えていた。この二つの成分を加えると、通常より大量の粉ミルクを生産できるが、栄養成分は損なわれる。
連警は、偽造粉ミルクに多量加えられた成分の臭いなどを消すために、苛性ソーダが加えられたとみている。サンパウロ州栄養学協会のヴァンデルリー・マルキオーリ栄養士は、乳清やマルトデキシトリンを食しても食中毒は起こらないとし、苛性ソーダが混ざっていたのではないかと推測している。「下痢の原因は、衛生条件が非常に悪かった、あるいは苛性ソーダのような物質が含まれていた、と考えられる」。
ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)のエジナ・F・アルクーリ研究員によると、液状ミルクのpH度を調整する不正な方法が苛性ソーダの加入だという。
偽造粉ミルクは、見た目や味が普通の粉ミルクとまったく変わらないため、消費者が見ても偽造品かどうか分からない。苛性ソーダも、相当な量が入っていないかぎり、判断不可能だという。
食料品技術研究所(ITAL)のアイルトン・ヴィアウタ研究員は、苛性ソーダが偽造粉ミルクに多量に混ざっている場合、ミルクを水で溶かして温めたときに、濃度が濃い部分と薄い部分に分かれると説明している。
サンパウロ大学(USP)毒物研究センター(CEATOX)のアンソニー・ワン指導員は、「偽造粉ミルクを飲んだ人に対する被害は、必要な栄養分がとれない(乳清などが原因)という軽いものから、口や内蔵などを火傷する(苛性ソーダなどの劇薬が原因)などの重症まである」と言明している。