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サッカー王国に泥塗るペレー=自らの人選を急きょ訂正=国民、同僚から非難集中

3月 6日(土)

 王様のご乱心?――創立百周年を記念して、FIFA(国際サッカー連盟)が選ぶ偉大な名選手のリスト提出を任された「キング」ペレー。2日にフォーリャ・デ・サンパウロ紙が入手したペレーのリストがブラジル国内を大きく騒がせている。自ら選んだブラジル人選手は自身やジッコ、ロマーリオらを含むわずか13人で、最多となったイタリア人とフランス人の14人に劣る数。W杯で5度の優勝を誇るサッカー王国にも関わらず、過去の実績を顧みない人選に国民や、かつての同僚からも激しい非難が集まった。慌てたペレーは4日に新たなリストを発表、最多となる15人のブラジル人を選出した。(下薗昌記記者)

 このリストはFIFAが20世紀に活躍し、現存する名選手を100人決めるもので、事前にFIFAが用意した200人の候補の中から、ペレーは120人を選抜した。
 ブラジルからはペレーに加え、1970年メキシコ大会を制した主将カルロス・アウベルト・トーレスや日本代表監督のジッコ、ファルカンら過去の名選手を始め、現役セレソンのカフーやリヴァウド、ロベルト・カルロスらも含まれている。
 これらの人選に異論は上がっていないが、まず新聞やテレビなどメディアが噛み付いたのはわずか13人にとどまった選出の少なさだ。
 ペレー曰く、イタリアとフランスは名選手の数でブラジルを上回る――批判の口火を切ったのは3日付でペレーのリストを単独掲載したフォーリャ紙だ。W杯優勝3度のイタリア、わずか1度にすぎないフランスにも劣る選手数だけでなく、ペレーとともに60、70年代にブラジルの黄金期を築いた仲間が選出されていないことを指弾している。選手として2度、監督、総監督として4度の優勝に関わっているザガロは「こうしたリストに不満は付き物だ。ただ、ブラジルは唯一5度を勝ち取っている王者。他のどの国より多くてしかるべき」と不快感を隠さなかった。
 特に批判が集まっているのは、ブラジル国内で史上最強のセレソンと考えられている70年メキシコ大会の優勝メンバーが2人しかいないこと。
 3日夜に放映されたバンテイランテス局のスポーツ番組では司会のジョルジ・カジュルーが痛烈に批判。「どうしてジャポネスの中田(英寿)が入っているのに、リヴェリーノやジェルソンがいないのだ」と視聴者に訴えた。
 ザガロ監督に率いられた70年セレソンはペレーを始め、リヴェリーノやトスタン、ジェルソン、ジャイルジーニョら5人の天才をキラ星のごとく並べた豪華メンバーで名高い。ペレーに選んでもらえなかったジェルソンは同局の生中継で「おふざけはいい加減にしろ、ペレー。こんなリストはこうしてやる」と視聴者の目前でリストをビリビリに引き裂いた。
 ブラジル最大のスポーツ紙ランセは読者に緊急インターネット調査を実施。本来含まれるべき選手の投票を行った。結果、リヴェリーノ33%、ニウトン・サントス21%、ドゥンガ20%、ジェルソン15%、トスタン12%――と続いた。
 4日にペレーが新たに発表した125人のリストには当初の13人に加えて、リヴェリーノとニウトン・サントスが仲間入り。メディアや評論家の非難に屈した格好になったことについてペレーは「ほかに好きな選手も沢山いるので胸が痛むが、私は選択せざるを得ない立場だった」と釈明した。
 これまでもW杯の優勝などで、的外れな候補を上げたり、セレソンをこき下ろしたりと舌禍事件を巻き起こしてきたペレー。王国のメンツに泥を塗った今回のドタバタ劇は、同時に「王様」の威光も失墜させたようだ。