「長官。隊員は全員元気。万事順調」―。イラク派遣の陸上自衛隊サマワ部隊・番匠幸一郎一等陸佐からテレビ電話で報告を受けた石破茂防衛庁長官もホット胸を撫で下ろしたに違いない。それにしても、世の中は便利になったものだ。自衛隊が自慢の輸送機C130でもイラクまでは遠すぎて飛べない。途中の空港に寄っては給油しないといけないし、とにかく飛行機の航続距離が短かすぎるのだ▼それなのに今や電話のベルを押せば顔も映るし戦車もちゃんと動くのが見える。恐らく番匠一佐は、緊張した表情だったろうし、長官も真面目な顔で応対したものと思う。イラクの緊張は続く。テロの標的も米軍への攻撃からイラク人を狙った卑劣なものへと変わってきてはいるが、派遣部隊の安全を保障するものはない。気候も三月、四月になると厳しくなり砂嵐も猛烈な勢いで吹きまくっている▼こんな環境のもとで復興を支援する自衛隊の苦しさは痛いほどに解る。これからは夏を迎え気温は五〇度近くにもなるという酷暑の日々。そんな某日。番匠一佐は、北海道の名物料理「石狩鍋」を隊員らに振る舞った。鮭と野菜という懐かしい鍋を口にした若い兵士らも、これで一気に元気を取り戻し任務遂行に汗を流している▼陸自派遣には反対もあった。が、近ごろの世論調査では「賛成」が六〇%に近い。自民党を軸に「防衛庁」を「省」にするという法案が国会に提出される動きもあるし後方は大丈夫。派遣陸自に「頑張れ」と声援を送りたい。 (遯)
04/03/06