3月 5日(金)
国際交流基金の日本文化紹介派遣事業の一環、ロボット物を中心に多彩な活動を続けるアニメ監督、富野由悠季さんの講演会が二日午後八時から、ヴェルゲイロ区のサンパウロ市立文化センターで開催された。故・手塚治虫氏の裏話を含め、北斎漫画や鳥獣戯画から現代アニメを読み解き、日本語の独自性を語った。
「アルファベット文字の文化と日本語の文化とでは、根本的な違いがある」。基本的に横書きしかできないアルファベット文字と違い、日本語は縦、横自在に書くことができ、まったく同じ意味を表現できると論じる。
「漢字、ひらがな、カタカナというまったく性質の違うものを組み合わせて文章にするため、見た目の印象が多彩で、より変化を楽しむことができる。文字を読みながら、そのような視覚印象の違いを楽しむ能力は、日本人はもともと高かったのではと思います」とし、絵とセリフ、擬音効果などが一体となった漫画が、日本人の好む表現手法として定着した背景を分析した。
絵巻物・鳥獣戯画は、擬人化した蛙などの戯れる姿を、線で描いたもので、「千年も前から線で描かれた絵を楽しむ文化が日本にはあった」と解説した。同様に、江戸時代における日常生活の風俗を版画で表わした北斎漫画も、線による表現であり、それが文化的背景となって、戦後の漫画アニメの急激な成長につながったと解説した。
「これまでの映画制作は、北半球の人が中心になってきた。デジタルというクールな技術が開発された現在、むしろ、南半球の温かい人情味があふれた映像が加わることで、新しいものが作られていくのでは」とブラジルのアニメ製作者にエールを送った。
非日系の若者を中心に三百人近く集まった会場からは、引き続き熱心な質問が飛び、富野さんは丁寧に応答していた。